モバイルネットの破壊力を実感、10年で生活がらり
NTTドコモ執行役員 栄藤稔

2016/12/27 6:30
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先日、シリコンバレーの友人たちと最近10年間で変わった生活スタイルは何かという話をした。上位にあがった3つの生活スタイルの変化に共通するものを示したい。

1985年広島大院修了、松下電器産業(現パナソニック)入社。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)や大阪大、NTTドコモのシリコンバレー拠点を経て現職。イノベーション創出を担当

1985年広島大院修了、松下電器産業(現パナソニック)入社。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)や大阪大、NTTドコモのシリコンバレー拠点を経て現職。イノベーション創出を担当

1位は「テレビを見なくなった」である。夜のニュースやドラマを家族で集まって視聴する場面が減っている。テレビ放送がインターネット動画配信に置き換わった。

家族だんらんの機会がなくなったのではない。テレビの大きなディスプレーでネット上のドラマや映画を見る。それはスマートフォン(スマホ)やタブレット端末でも可能だが、家族と一緒のときはテレビになる。

ネットによる動画配信では、米ネットフリックスというシリコンバレーの企業が最大手だ。北米におけるネットのデータ転送量の40%を彼らのサービスが占めているという。スポーツ番組の実況やニュースもネットワーク経由で視聴できるようになった。米AT&Tによる米ディレクTVの買収は、放送コンテンツのネット配信への移行を象徴している。

2位は「現金を使うことがなくなった」だ。クレジットカード大国の米国とはいえ、レストランの支払いを割り勘にするといった個人間のお金のやり取りは現金だった。今は友人への割り勘程度の支払いがスマホで無料でできる。

背景には、偽札や強盗の被害を避けるため、現金授受の機会をできるだけ減らしたいという動機が強かったことがある。米国の銀行決済コストが非常に安いという事情もある。それでも決済コストは発生する。個人間の電子支払いの無料化はどのように実現されているのだろうか。

個人がある決済サービスに加入して当座預金口座と連動させるようにする。ネット上に財布があるようなものだ。支払先の相手も同じサービスに加入していれば、自分のネット上の財布から相手のネット上の財布に即座にお金を動かせる。

このような決済サービスを提供している米国の企業には、ベンモやスクエアキャッシュ、フェイスブックなどがある。彼らは決済サービスを無料にすることで自社のプラットフォームに集客し、関連サービスの利用を増やすことを狙っている。

3位は「ウーバーという新交通システムが登場した」である。

ウーバーとは、2009年創業の米ウーバーテクノロジーズが提供する「白タク」配車サービスである。白タクと書いたのは、タクシーではない個人が自分の車で「顧客」の送迎をするからだ。

利用者がウーバーのアプリを使って乗車位置と降車位置を指定すると、数分で車が迎えに来る。利用者と運転手のスマホの全地球測位システム(GPS)機能で移動経路が記憶され、支払いは利用者が登録したクレジットカードで決済される。

白タクの配置場所は、コンピューターが需要や天候、道路の混雑状況などを考慮して最適化している。これはもはや単なる白タクではない。新しい交通システムだ。数年先には自動運転によるヒト・モノ混載の流通システムもありえるだろう。

サンフランシスコとその郊外での友人たちの移動手段はウーバーが主になった。私もシリコンバレーの滞在先から友人宅との往復にウーバーを利用した。片道約32キロメートルの料金がわずか10ドルだったことには驚いた。

帰路で利用したときの運転手は耳が聞こえない人だった。言葉でのやり取りが難しくても、彼のスマホが行き先を指示している。ウーバーが障害者の雇用を生み出していることを知り、感動で涙が出た。

07年にスマホが登場して以降、進化し続けるネットワークとモバイル機器が様々な産業で利用されて生活スタイルを変えている。モバイルネットワークと各産業との化学反応はとどまることを知らない。

[日経産業新聞2016年12月22日付]

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