2019年3月26日(火)

春秋

2016/12/17 2:14
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ロシアにもロシア人にも幻滅した。もう名文句やもったいぶった態度にはうんざりだ。そう書いたのは「人間の絆」などで知られる作家サマセット・モームである。1917年、革命が進行していたロシアに、英情報部の密命を帯び、潜入した体験がもとになっている。

▼モームは人間観察の達人だった。情報網を作り、臨時政府の首相ケレンスキーと頻繁に会って交渉した。政府方針が日々変わる。首相は演説はするが、どちらに行くべきか分かっていない。様子を見ているだけの抜け殻と見抜いた。結局、十月革命が起き、レーニンとトロツキーが政権を握り、革命阻止の任務は失敗する。

▼スパイの腕前は現在のロシアの大統領の方が上かもしれない。対話の名手である。人心操縦術にたけ、自分は交渉相手が望むような人物だと思わせる。「強いロシア」を掲げ、国民の高い支持を得ているのも、旧ソ連のKGBの訓練で磨きをかけた「人たらしの術」のおかげらしい。(木村汎著「プーチン―内政的考察」)

▼安倍首相にはどう映っているか。鳴り物入りの会談は平和条約への決意表明にとどまった。北方領土には、にべもない。モームは半年早ければ、まだ可能性があったと嘆いた。この問題も時機を逸したのか。トランプ旋風で再び世界は変わった。もったいぶった話術に翻弄されているうちに、北の島々はどんどん遠くなる。

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