リーダーは孤独じゃない 経験共有、仲間と決める
グロービス経営大学院学長 堀義人氏(47)

2016/12/21 6:30
保存
共有
印刷
その他

「リーダーは孤独だ」と言われる。それは本当だろうか。リーダーが孤独を感じるのは、重要な意思決定をすべて自分1人で引き受けているからであろう。数多くの違う意見を聞き、利害が異なる関係者に配慮しながら、1人でこもって考え、最後は自分の判断で決める。そういう機会が多いと、孤独を感じるのだろう。

僕はリーダーとして孤独を感じたことはない。理由は簡単である。すべて仲間と相談して決めるからだ。グロービスの重要な意思決定機関には取締役会と経営執行委員会がある。双方の会議においても、代表者たる僕1人では意思決定できない仕組みになっている。

経営執行委員会での意思決定の条件は代表者(僕)を含むメンバーの過半数が賛成することだ。仮に僕が賛成しても半数が反対の場合、あるいは逆の場合はそこで決まらず、取締役会の判断に委ねられる。取締役会のメンバーは僕を除く3人は社外出身者だ。全会一致での決定を目指しているので、説明や相談など合意を得る努力が欠かせない。

グロービスには「担当者がやりたくないことは無理強いしない」という暗黙のルールもある。トップが命令しても、部門リーダーやチームリーダーが反対なら動かない。従って、常に社内の仲間と相談しながら意思決定することになる。反対を押し切って事を進める孤高のリーダーにはなり得ないのだ。

社外にも仲間がたくさんいる。起業家だから当たり前だが、創業期から上司がいなかったこともあり、学びの場を社外に求めてきた。できる限り多くの経営者団体に入り、セミナーに参加し、海外カンファレンスに出向いた。著名なリーダーや専門家の意見を聞いて自分の知らない世界を知り、能力を高める努力をしてきた。

そのプロセスで数多くの仲間ができた。起業家や経営者、政治家、学者など多岐にわたる。その仲間達が現在では日本版ダボス会議「G1サミット」に集うリーダーたちとなった。彼らとの会合は週1回のペースで、各種カンファレンスやフォーラム、委員会などで研さんし続けている。

1人の力は限られている。可能な限り多くの仲間を巻き込むことを大切にしている。社内でも社外でも孤独を感じないし、家に帰れば5人の子どもたちが常に騒がしく迎え入れてくれる。半面、仲間と意見の食い違いが生じ、反対されることも日常茶飯事だ。反対されたら、「自分の考え方を理解してもらえない」と嘆いたり、「理解してもらえないことに耐えるのがリーダーだ」と開き直ったりしない。なぜならば、意見の食い違いは、むしろ歓迎すべきことだからだ。

食い違いの原因は根本的なものではなく、各人が蓄積した経験や学び、現在の立場、知っている情報のギャップなどから来ていることがほとんどだと思う。つまり、それらのギャップを可能な限り埋める努力をすることが必要だ。

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。54歳。

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。54歳。

僕が見聞きしたこと、やってきたことは「起業家の風景」としてメールマガジンやコラムで共有する努力をしてきた。最近ではSNS(交流サイト)を使って、風景、学び、得た情報を共有することにかなりの時間を使っている。

さらに、学びを共有してもらうため、社員には経営学修士(MBA)取得を推奨している。僕が参加して有益だった海外のカンファレンスやセミナーにも可能な限り参加してもらう制度を設けた。僕が得た学び、僕が得た刺激を日本だけでなくて、世界で体感してほしいのだ。

孤立しないような環境づくりも大切だ。社員とギャップをつくりたくないから、社長室はない。壁をつくりたくないからパーティションもない。席にいると次から次へと相談が舞い込む。こんな「孤独を味わえないリーダー」が、寂しがり屋の僕にはちょうどいいのかもしれない。

[日経産業新聞2016年12月16日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]