2018年1月21日(日)

トランプ氏の企業活動介入は禍根を残す

2016/12/7 2:30
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 強い違和感を覚えざるをえない。トランプ次期米大統領が米国企業に圧力をかけ、メキシコへの工場移転を撤回させたことだ。

 こうしたやり方で雇用を守っても効果は一時的だ。政治指導者が個別企業の意思決定に気ままに介入する行為は、むしろ企業活動を萎縮させ、経済の停滞につながりかねない。米国の経済運営に対する信頼も損なわれる。大きな禍根を残すことになるのではないか。

 標的になったのはインディアナ州の大手空調メーカー。親会社のトップに直接電話し、移転決定を取り消すよう迫ったという。トランプ氏は今後も同様の手法を使う可能性を示唆し、海外移転した工場からの対米輸出品に35%の関税をかけるとも語った。選挙公約に沿ったものだが、保護主義的な色彩が極めて強い政策といえる。

 米大統領は強い権限を持つだけに、恣意的な権力行使は極力慎まなければならない。法律によらずに、個別企業の経営判断に公然と踏み込む同氏の行動が大統領就任後も続けば、長年培われてきた米国の民主主義の原則も傷つく。

 こうしたやり方は、政府と企業との関係を不透明かつ不健全なものにする懸念もある。

 今回の大手空調メーカーの事例では、ペンス次期副大統領が現在インディアナ州知事であることから、州の税制優遇措置というアメも与えて決定を思いとどまらせた。今後も政府と企業の間で様々な取引が行われるようになれば公正な競争に基づく市場経済はゆがみ、コネが幅をきかせる「縁故資本主義」に陥りかねない。

 威圧や脅しをバックに成果を得ようとするトランプ氏の手法は、米国と強い経済関係を持つ海外諸国にとっても大きな懸念材料だ。

 トランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)について、「メキシコだけが得をする仕組み」と批判し、再交渉で良い条件を得られなければ離脱すると脅しをかけている。同氏の顧問らは対米貿易黒字が大きい国と2国間で交渉し、不均衡を是正する考えも示す。

 保護貿易や管理貿易につながるこうした主張が実行されれば、世界経済には打撃となる。米国の競争力強化にもつながらず、長い目で見た雇用増加にも役立たない。

 工場の移転を強引に止めて喝采を求めるようなやり口は長続きしない。労働者を本当に守りたいなら職業訓練の強化や潜在成長力を高める政策などに専心すべきだ。

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