/

春秋

「日本も、けさから、ちがう日本になったのだ」。太宰治の短編「十二月八日」の一節である。作家の妻がしたためた日記の形で開戦の一日を描く。配給の酒を受け取り、女児と銭湯につかる日常の中で「ああ、誰かと、うんと戦争の話をしたい」と胸を弾ませている。

▼75年前、真珠湾攻撃や英領マレー半島への侵攻に多くの日本人が高揚感に包まれた。その一方、英首相チャーチルは情勢を静かに見極め、米国の参戦を「最大の喜び」と表現している。「われわれは戦争に勝ったのだ」とまで言い切った。既に独軍は英国上陸を断念、対ソ連戦ではモスクワ近郊で冬将軍におそわれていた。

▼安倍首相が現職としては初めて真珠湾を訪れるという。謝罪ではなく、慰霊が目的と強調している。人類史上初の核攻撃に帰結した戦争の勃発の地である。ヒロシマとパールハーバーへの日米首脳の相互訪問で、敵対から和解へ、さらには同盟強化による世界への貢献へ、という二国間関係の範を示せるのならば意義深い。

▼トランプ政権の誕生が世界の不安定化を招くとの懸念は強い。こんな時こそ、協調の大切さや孤立主義の克服など、かの地で込めるべきメッセージは多々あろう。無謀な戦争への突入はいっとき熱狂で迎えられるが、すぐ破滅の淵へ出くわす。そんな国を世界に生まない決意を新たに、今は静まった海に向き合ってほしい。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン