春秋

2016/11/29 2:30
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中国の歴史書に「棺を蓋(おお)いて事定まる」とある。人の功績は死んだ後に初めて正しく判断されるという意味だ。歴史の評価が下されるのはまだ先のことだとしても、ここまで反応が分かれるものかと驚かされる。英雄か、独裁者か。賛否両極端の声がわき上がっている。

▼キューバの前国家評議会議長、フィデル・カストロ氏が先週末亡くなった。服喪期間に入ったキューバからは「国父」と慕う市民らの、嘆き悲しむ姿が伝えられる。一方でカストロ体制を逃れ米国に渡った人たちは「これでキューバに自由がやって来る」と大喜びの様子。ニュース映像を見ればお祭りのような騒ぎである。

▼例によって米国では新旧の指導者で対応が食い違う。キューバとの国交を回復したオバマ大統領が弔意を表すや否や、トランプ次期大統領は「野蛮な独裁者」とののしった。誰かにとっての「正義」も逆の立場からは「テロ」かもしれない。世界に思いを巡らす時に忘れてはならない視点を突きつけられるような気がする。

▼カストロ氏には人間味ある逸話も多い。野球好きはよく知られ、選手として米大リーグを夢見たこともあったという。広島市を訪れた際には原爆の被害に心を痛め、「このような残虐行為が、決してまた起こりませんように」と記した。反米や革命といった政治・思想を離れれば、一人の人間としての姿が見えてくるようだ。

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