2019年1月16日(水)

春秋

2016/11/27 3:30
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作家の安部譲二さんは1975年、銃の不法所持などの罪で東京の府中刑務所に収監中だった。所内の木工工場では、徳島大中退で、赤軍派メンバーの城崎勉被告と席がとなりだったという。眼鏡の奥の澄んだ瞳を輝かせ、革命へ一生をささげる、と話していたらしい。

▼被告は77年、ダッカの日航機ハイジャック事件で、乗客の命と引き換えに「超法規的措置」で釈放された。86年にジャカルタでの大使館襲撃に関与したとされ、米国で十数年、服役した後、日本で起訴。先日、懲役12年の判決が下った。68歳で、団塊の世代である。法廷では「余生は故郷で過ごしたい」とも話したという。

▼社会学者の竹内洋さんは60年代末の学園紛争の高揚を学生の境遇の変化から分析している。大学進学率が3割に近付き、進路が経営幹部候補や知的専門職でなくなった。自分は教養あるエリートとは無縁のただのサラリーマンになるのだ、との不満も背景にあったという。一部は社会変革に走り、運動は現実から遊離した。

▼70年代に撮られた活動家の手配写真を街頭で見る。一時の激情からの行動が、いかに長く世に残響するか。今、政治の主張はネットで発信される例も多い。受け手は自ら関心ある情報しか集めない。結局、視野は狭まり先鋭となる。竹内さんはこの傾向を「自分筋」と名付け戒めた。内外のニュースに、思い起こす一言だ。

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