2019年4月19日(金)

カリスマなきキューバの行方

2016/11/27 3:30
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キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が90歳で死去した。「革命の世紀」ともいわれる20世紀の一断面を象徴する指導者のひとりだった。

米国のビジネス界とも結びついた体制が収奪的だとして反旗を翻したキューバ革命が起きたのは、冷戦さなかの1959年。指揮した前議長は米国との関係悪化を望んでいなかったとされるが、時代はそれを許さなかった。

米国はカストロ政権を「容共的」だとして国交を断ち、一度ならず転覆しようとした。激怒した前議長はソ連に傾斜した。世界が最も核戦争に近づいたとされる62年のキューバ危機には、前議長の反米感情が作用した面もあった。

経済政策の面でも前議長はソ連に傾斜し社会主義の道を歩んだ。医療や教育の無償化などを評価する声は少なくないが、米国の禁輸もあってキューバの経済は疲弊した。批判的な声に対し前議長は容赦のない弾圧で応じた。

カリスマ的な独裁者となった前議長は2008年に一線を退き、弟のラウル・カストロ議長が後を継いだ。当面、大きな政治の混乱はないとみられるが、現議長も85歳と高齢だ。トップの座を兄と弟で半世紀以上も占めてきたことは、奇異というしかない。政治を国民に広く開く新たな行き方を、キューバは求められる。

オバマ米政権が昨年、54年ぶりにキューバと国交を回復したことを、トランプ次期大統領は選挙戦で批判してきた。米国が「キューバいじめ」に回帰すれば抑圧的な体制の延命を促すことになりかねない。冷静な対応を求めたい。

中南米では、今は亡きベネズエラのチャベス前大統領のように、前議長を慕う左派の指導者や活動家が、少なくない。ただ、原油安の影響もあり足元では左派政権の多くが苦境に陥っている。

社会主義的な政策の問題を直視する必要が、改めて浮き彫りになっている。前議長の死去を踏まえて、中南米諸国は地に足のついた歩みを強めなくてはならない。

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