2019年6月27日(木)

パズルゲーム「深圳 I/O」でプログラミング入門
山田 剛良(日経テクノロジーオンライン副編集長)

2016/12/1 6:30
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あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」の普及が始まり、プログラミングなどこれまでエンジニアに限られていたスキルへの関心が一般にも高まっている。そんな関心を刺激するゲームが登場している。

初期の課題では、飲食店の電飾看板を作る

初期の課題では、飲食店の電飾看板を作る

「プログラミングの面白さを凝縮したようなゲーム。ここ1週間は空き時間を全部当てるほどハマってます」と話すのはゲーム開発者の吉岡直人さん。ソニーやマイクロソフトを渡り歩き、「プレイステーション」や「XBOX」などの開発に関わったベテランだ。

吉岡さんがハマっているのは「SHENZHEN(深圳)I/O」というゲーム。10月に米国のゲーム配信サービス「スティーム」で早期アクセス版を公開、今月18日に正式配信が始まったばかりのオンラインゲームだ。まだ英語版しかないが、吉岡さんのような熱狂的なファンを世界中に生み出している。

深圳I/Oを一言で説明すると、電子ガジェットの開発を模したパズルゲームだ。プレーヤーは中国の電子産業の集積地、深圳市にある電子機器の開発会社に転職。そこで与えられる「開発課題」をこなしていく。

課題はかなり本格的。プレーヤーは専用のCAD(コンピューターによる設計)ソフトを使って、基板上にICチップを並べ、配線して回路を設計し、チップを動作させるプログラムを組み込む。使うのは「アセンブリ言語」。ゲーム向けに簡略化されているが、実際の電子機器の開発でも使われる言語だ。

プレーヤーには最初に合計47ページにおよぶ技術マニュアルが与えられる。中身はICチップやアセンブリ言語の仕様書で、本物さながら。昨今のスマホゲームのような親切さは一切ない。「ものすごくスパルタな作りで明らかにやる人を選ぶ」(吉岡さん)

とはいえ、最初の方は、発光ダイオード(LED)をチカチカさせたり、入力信号を指定通り加工して出力したりと比較的やさしい課題が続き、プログラミング経験が無くても解ける。これが実はゲーム自体のチュートリアルになっている。飲食店の電飾看板の回路設計など、完成品が見えるのもやる気を引き出す。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から現職。京都府出身、50歳

中盤以降はコストや消費電力なども設計要件に入ってくる。世界中のプレーヤーと成果を比較できるのもミソだ。クリア後にコストや消費電力、コードの行数で他のプレーヤーとの比較が表示される。「自分のよりもっと良い設計があったと知ると、悔しくて燃える」と吉岡さんは話す。より良い設計を思いついて夜中に目がさめたこともある、という。

ハマる人が続出するのはこのゲームに、電子機器の開発やプログラミングの醍醐味だけが詰まっているからだろう。無理なコスト削減や納期の短縮を強いるむちゃな上司はおらず、開発費も時間も使い放題。頭を使って課題をクリアし、よりよい設計で他人と競争するのは、技術者の仕事の面白さの中核と言える。

開発した独立系ゲームベンダー、米ザクトロニクス(ワシントン州)は以前にもプログラミングを題材にしたパズルゲームをリリースしており、この分野を得意とする。

世界中の新しいゲームが集まるスティームでは、これ以外にも自動化した工場を建設する「ファクトリオ」など技術者の仕事やモノづくりを題材にしたゲームが登場し、人気を博している。

政府が小学校で必修化する方針を打ち出したように、プログラミングのスキルは社会で広く求められるようになりそうだ。とはいえ、いきなり専門書で学ぶのはちょっと……という向きも多いはず。まずはゲームで学ぶのはどうだろう。

[日経MJ2016年11月28日付]

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