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体が勝手に動いたゴールで覚醒 G大阪・長沢駿(上)

2016/11/21 15:30
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一つのゴールが男を覚醒させた。8月6日に行われたJ1第2ステージの鳥栖戦。同点で迎えた後半追加タイム、MF大森晃太郎が左サイドからクロスをあげた。途中出場していたG大阪のFW長沢駿は引きつけられるようにゴール前へ走り込む。「ボールが来た瞬間に走り込めていたので、ああ、ここに来るなとすぐ分かって、相手の前に入った」。相手DFとGKに競り勝って頭で一撃、決勝点をたたき込んだ。

「日本代表で活躍したい」と意欲をみなぎらせる

「日本代表で活躍したい」と意欲をみなぎらせる

一見よくある得点シーンだが、その過程はこれまでのサッカー人生で経験したことのない感覚に満ちていた。「体が勝手に動いて取れたゴール」。それまでは頭でまず考えてから、次の行動をイメージしていた。「相手がこう動いているから、自分はこう動こうかなとか。相手やバランスを見ながらプレーしていた」

それがクロスに無心で反応できた。「考えて動いているようじゃダメだなと思っていた。勝手に体が動くのが本物で、かなり近づけている。すごく自信になった」。プロ生活10年目の28歳にして達した境地だ。

「周りを生かすプレーが持ち味」と自己分析する。チームのために走り回り、前線で守備をこなし、ポストプレーでつなぎ役にも徹する。ハードワークがたたえられる一方で「点を取りたい意識は毎試合あるけど、どこか取れればいいかな、くらいの感じがあった」という。だが「今は絶対に点を取れると思っている」。192センチの長身アタッカーは目をぎらつかせる。

高さ武器だが足元の器用さも持つ

鳥栖戦から一気に量産態勢に入り、8月はリーグ戦4試合4得点で月間MVPを獲得。特に湘南戦のゴールは見る者をうならせた。「あれも同じ感覚。ボールしか見ていなかった」とDFの背後に抜け出し、後方からのロングパスに半身になりながらジャンピングボレー。月間ベストゴールに選ばれた。9月も止まらず、ルヴァン杯も含め2カ月で9戦8発と爆発した。今季のリーグ戦は出場21試合でチーム最多タイの9得点。昨年までのJ1通算7得点を1年で上回った。9日の清水との天皇杯4回戦でも延長後半に頭で決勝点を決めるなど、ゴールへの嗅覚は研ぎ澄まされている。

高さを生かした武器のヘディングについ目がいきがちだが、足元の器用さも併せ持つ。今季はボレーのほか、華麗なループやヒールでも得点を重ねた。G大阪監督の長谷川健太は「高さだけではなく、足元も非凡な才能がある。あれだけ献身的に動ける大きな選手はいない」と断言する。

日本代表監督のハリルホジッチも「面白い選手」と評して興味を抱く。長沢も「最近まで代表に入るイメージはなかったけど、自信もついて欲が出てきた。もう一段階上に行って、日本代表で活躍したい」と意欲をみなぎらせる。日本の前線に欠けているのが「高さ」。目覚めた大型FWがさらに飛躍を遂げれば、その"穴"を埋める資格は十分ある。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊11月21日掲載〕

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