農家の競争力強化へ農協改革の加速を
政府の規制改革推進会議の作業部会は、全国農業協同組合連合会(JA全農)が手掛ける事業の縮小や原料生乳の流通自由化などを求める提言をまとめた。自由な競争環境を実現し、農家の収益力を高める狙いだ。農協組織は改革を加速してもらいたい。
政府・与党は2014年に農協制度の抜本改革をまとめ、全国農協中央会(JA全中)の監査・指導権限をなくすなどの改正農協法が今年4月に施行された。しかし、農協改革は緒に就いたばかりで、改善の遅れる分野は多い。
作業部会は肥料や農薬などの販売価格が韓国などと比べ割高で、それが競争力の強化を阻む一因とみている。そのため提言は全農に対し、農家への資機材の供給(購買)事業を1年以内に縮小し、メーカーとの価格交渉やコンサルタント業務に徹するよう求めた。
全農が資機材を仕入れ、一定の手数料を上乗せして農家に販売する現在のやり方では資機材価格の引き下げは進みにくい、と考えたからだ。
作業部会は農産物の販売についても現行の委託方式を見直し、農協自身がリスクをとり、スーパーなどに販売する買い取り方式に転換するように提言した。
農家も農協も市場競争を通じて経営感覚を磨き、付加価値を高めることが農業改革の主眼だ。従来の横並びのやり方に安住していては競争力は身につかない。
農協組織には今回の提言は民間経営への不当介入だと反発する声が多い。この提言には強制力もない。しかし、全農が手掛ける資機材の供給などは日本の農業の根幹にかかわるものであり、本来は農協組織が率先して取り組むべき課題だ。
提言は酪農分野の規制改革にも言及した。酪農家は半世紀にわたって、牛乳や乳製品の原料に使う生乳を指定の農協団体に原則として全量出荷するように求められてきた。提言のように補助金支給による差別をなくし、酪農家が自由に出荷先を選べる環境を実現しなければならない。
提言は地域農協が手掛ける銀行業務を上部団体の農林中央金庫に譲渡し、農業事業に注力する改革も加速するように促す。この改革は14年の政府・与党合意にも盛り込んだが、まったく進んでいない。農協は農家による農家のための組織という原点に戻り、農家と農業への貢献に専念すべきだ。