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技術よりアイデア シリコンバレーで仲間に入るには

西城洋志(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーCEO)

近年の日本企業のシリコンバレー進出や当地との関係構築の意欲は大変高い。日本貿易振興機構(JETRO)によると、進出企業数は800社に迫り、過去最高となっている。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

私が当地に赴任した当初、大変驚き、苦しんだことがある。それは、日本企業の駐在員が当地のイノベーションコミュニティーにおいては「外野」だということである。

「ネットワーク構築が大事、コミュニティーに入り込むことが第一歩」と先人にアドバイスをいただいたのだが、それを実行しようにも「時間の無駄だから」と面談のアポイントを受けてくれない。こうした扱いを受けるのは初めてで大変困惑したし、腹立たしくも感じた。

仕方がないので「ミートアップ」や「コンファレンス」と呼ばれる会合に参加し、ネットワーク構築のヒントを探し続けた。やがて、多くの日本企業の駐在員が「オーディエンス(聴衆)」と見なされていることに気づいた。

私はこちらのコミュニティーにおける属性を「ビジター」「オーディエンス」「プレーヤー」にわけて考えている。ビジターは外からの訪問者や出張者。オーディエンスは当地にいるが、コミュニティーへの参画ができていない、またはしていない者。プレーヤーが本当のコミュニティーの参画者だ。

オーディエンスとプレーヤーの違いは「今より素晴らしい世界を少し先の将来につくることに対して行動しているか」だ。それを判断するのはコミュニティーであり、シリコンバレーの基準で測られる。シリコンバレーでは、オーディエンスとプレーヤーとでは、得られる情報や機会に格段の違いがある。

どうすればプレーヤーになれるのか。まず、「ギブ・ファースト(まず最初に与える)」という心得と行動があげられる。とはいえ、いきなりスタートアップへの投資や彼らとのジョイントプロジェクトができる状態で当地に進出できる事業会社は多くないと思う。

ではどうすればよいのか。自身の考えや経験に基づいた意見やアイデアを与えることだ。それだったら誰にでもできる。「不確実な未来の事業」をやっている彼らにとっては、お金よりも技術よりも価値があることになり得る。そうした努力を何度か繰り返していくと、「この人に会うと何らかの気付きや考えが得られる」と相手に「会う価値」を認知してもらえるようになるのだ。

次に発信である。重要なのはどんなコンテンツを流せるかだ。彼らが知らない、または気づいていない情報を提供できるか、自分がやりたいことやつくりたい未来は何か――などだ。こうするとネットワークはアクティブになり、インタラクションが起こる。

多くの日本人は「英語を話せないからコミュニケーションできない」と思っている節がある。むしろ、伝えたいことがないからコミュニケーションできないのではないだろうか。言葉はあくまでも何かを伝える手段であり、言語以外にも絵や図、身ぶりや手ぶりがある。

ベンチャーキャピタリストの肩書に「パートナー」とあるのは、「新しい価値の創出におけるパートナー」という概念があるからだ。アイデアと行動力を持つ起業家と、資金や事業成長するためのリソースを持っている投資家。この両者がリスクもチャンスも共有して共に動くことが基本だ。「How can I help you?」という気持ちと自身の成したいことを発信すること。この2つを持って行動すれば、価値の大きな情報と機会を得られるようになる。

[日経産業新聞2016年11月15日付]

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