企業は成長持続へ自ら好循環づくりを
上場企業の2016年4~9月期は、本業の利益に金利の受け払いを加えた経常利益が前年同期に比べ13%減った。上期として4年ぶりの経常減益だ。17年3月期通期も前期比2%程度の経常減益が見込まれている。年初からの急速な円高・ドル安が主に製造業の収益拡大のブレーキとなる。
全体としては減益だが、2社に1社弱は利益を増やしている。減益になっても収益基盤の積極的な強化に動く事例も少なくない。不透明な経営環境に過度に身構えることなく、日本企業は成長の持続に向けた布石を絶えず打っていく必要がある。
トヨタ自動車は円高の影響の大きさを示した。
円換算した海外業務の収益が目減りしたことなどにより、トヨタは上期に3割弱の減益だった。通期でも約4割の減益を見込むが、予想利益は従来より1000億円上積みした。部品設計の見直しや省人化など原価改善策の積み上げが効果をあげる。
製品の競争力を高めることにより円高の悪影響を吸収するのは、4期連続の最高益を見込んでいるダイキン工業だ。
利益率の高い省エネエアコンの生産・販売に力を入れたことが収益力の向上につながっている。今後は世界的に部品調達の共通化などをいっそう進めることにより、北米を中心としたグローバル事業の採算改善を目指す。
看板だった半導体製造装置事業の合理化に伴い赤字に転落するニコンは、為替変動など環境の変化への耐久力を高める取り組みを示す例だ。聖域を設けず事業を見直すことにより、企業は生産性を高められる。そのうえで株主や従業員に利益を適切に配分することが、株式市場の評価向上や経営の安定につながっていく。
野村証券によれば、配当と自社株買いによる日本企業の株主還元額は16年度に16.8兆円と3年連続で過去最高になる見通しだ。経営が破綻した時の損失を最もかぶる株主に、利益の還元で報いるのは当然のことだ。
さらに、賃金引き上げなどを通じて従業員に報いることは事業の基盤固めに通じる。人材の引き留めになり、めぐり巡って個人消費の刺激にもなるからだ。
上期は減益決算だったものの、日本企業の収益状況は悲観すべきものではない。経済の好循環をつくる力はあるはずだ。