パリ協定発効で開く温暖化対策の新時代
地球温暖化対策に関する「パリ協定」が4日、発効した。日米欧のほか中国、インドなどの新興国や発展途上国を含む初の「全員参加型」の国際的な枠組みだ。温暖化ガスの「ゼロ排出」へ向けた新時代の幕開けとなる。
7日にはモロッコで第22回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP22)が始まる。日本はパリ協定の批准が遅れたため、ルールづくりを担う公式な会議ではオブザーバーにとどまる。ただ、他の関連会合には参加できるので緊張感をもって臨んでほしい。
パリ協定は2020年以降の温暖化対策を決めたが、すぐにやらなければならないことは多い。
地球の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満とし、1.5度に抑える努力もするという目標を達成するには、今世紀後半に温暖化ガス排出量を実質ゼロにしなければならない。各国が提出済みの削減目標を合計しても達成できない。
協定は5年ごとに、より野心的な削減目標に改めるとし、18年に準備作業を本格化させる。各国政府は今からデータを整え、産業界との連携を密にして新たな目標の検討を始める必要がある。
どれだけ目標を引き上げればよいか判断するには排出量の正確な測定、報告、検証が欠かせない。日本には計測技術や温暖化予測のノウハウがあり、新興・途上国の支援に生かせる。
各国は20年までに、今世紀半ばにかけての長期的な排出削減戦略も示すことになっている。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では時期の前倒しで合意しており、時間的な余裕はない。
政府は5月に閣議決定した地球温暖化対策計画で、50年までに排出量を現在に比べ80%減らす目標を明記した。絵に描いた餅に終わらぬよう、しっかり肉付けし行動に結びつけることが大切だ。
温暖化ガスの削減技術はこれまで以上に、企業の国際競争力を左右するようになる。革新的な技術の開発やそのための投資を促す仕組みの工夫が必要だ。温暖化ガスの排出枠を売買する市場メカニズムの導入も検討を急ぐべきだ。
国の長期的なエネルギー戦略をめぐる議論も深めなければならない。今世紀後半にかけて原子力発電にどこまで依存し、再生可能エネルギーをどれだけ増やしていくかは温暖化ガスの排出量に直結する。あいまいな状態は、企業の投資計画などの足かせになる。
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