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グローバル競争を勝ち抜く海運再編に

貿易立国の看板を掲げる日本の転換点ともいえるだろう。

日本郵船商船三井川崎汽船の海運大手3社がコンテナ船事業を統合すると発表した。共同出資会社を設立し、2018年4月から事業を始める。

高度成長期の日本では10社以上が定期航路による貨物輸送事業を手掛けていた。その流れをくむコンテナ船は、3社の統合で事実上1社に集約される。

海運は輸出入を支えるインフラで、コンテナ船はその中核だ。ただ、足元の事業環境は厳しい。世界経済の成長鈍化や資源安で需要が低迷する一方、発注済みの大型船の竣工が続きコンテナ運賃は歴史的な低水準にある。

企業が消費地の近くで生産する立地戦略を進めた結果、世界の貿易量が構造的に伸び悩むようになった、との見方も強まっている。逆風下のグローバル競争を勝ち抜くため避けて通れない道が、3社の事業統合だといえる。

現在、商船三井が運航するコンテナ船の規模は世界11位。日本郵船が12位で川崎汽船が15位だ。統合後の新会社の世界シェアは約7%となり世界6位に浮上する。

すでに世界の海運業界では再編が加速している。コンテナ船の世界3強の一角である仏CMA CGMはシンガポールの大手を買収した。中国では国有の海運2社が合併した。今年8月には韓国大手の韓進海運が経営破綻した。

規模で劣る日本勢が、急速な構造変化に危機感を抱くのは当然だろう。記者会見で日本郵船の内藤忠顕社長は「(世界で)18社あったコンテナ船事業会社は1年で14社になった」と語った。

川崎汽船の村上英三社長は「海外勢に伍(ご)して戦うには規模を追求し効率を高める必要がある」と述べ、商船三井の池田潤一郎社長は今回の事業統合を「ベストの決定」と位置づけた。

3社はコンテナ船以外にも多様な事業領域を持つ。鉱物資源や穀物などを運ぶばら積み船や石油タンカー、自動車運搬船などだ。

コンテナ船事業の統合を機に他の事業で連携を広げることも可能だろう。一方で「オールジャパン」にこだわらず国境を越えてパートナーを求める視点も大切だ。

海運に限らず、設備能力の過剰と過当競争に直面する日本企業は少なくない。グローバル競争をにらんだ海運業界の再編を、多くの日本企業は直視する必要がある。

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