2019年6月19日(水)

次世代原発、世界で研究活発 安全で高効率
編集委員 安藤淳

2016/10/31 6:30
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政府は高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の廃炉を年内に決める方針だ。高速炉の開発は続ける見通しで、フランスとの協力が軸になりそうだが、海外では多様な次世代炉の研究開発が進む。原子力をエネルギー源として使い続ける以上、進化が必要との考えに基づく。

米アイダホ州の統合型高速炉の関連施設は今も実験に使われている=田中伸男氏提供

米アイダホ州の統合型高速炉の関連施設は今も実験に使われている=田中伸男氏提供

「2050年以降、軽水炉は高速炉に置き換えが進む」。仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)のフランソワ・ゴーシェ原子力開発局長はこう予想する。25年ごろ建設予定の実証炉「ASTRID(アストリッド)」を高速炉時代の先駆けと位置づけ、日本との協力強化に意欲を見せる。

アストリッドは出力60万キロワットでウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使い、液体ナトリウムで冷却する。軽水炉でウラン燃料を燃やす際に発生するプルトニウムの「消費」が最大の狙いだ。燃料が増える増殖炉の機能はない。

仏は高速増殖炉「スーパーフェニックス」の開発を1997年に断念、10年からアストリッドの開発を本格化した。開発費総額は50億ユーロ(約5600億円)とも言われ、国内には賛否両論ある。19年ごろに建設の是非を最終判断する。

高速炉計画にはロシアも力を入れる。30年ごろの実用化をめざし、出力88万キロワットの実証炉が試験稼働を始めている。インドも開発に熱心だ。

各国は「第4世代」と呼ばれるより安全で発電効率が高く、放射性廃棄物が少ない次世代炉の実現につなげたい考え。現行の最新タイプが第3世代で、その「次」だ。米国の提唱で00年に誕生した「第4世代炉国際フォーラム(GIF)」を情報交換の場に活用する。

東京電力福島第1原子力発電所事故、原油価格の低迷などでGIFの活動は一時低調になった。しかし「研究開発は続き、今年はオーストラリアが加わった」と日本原子力研究開発機構の佐賀山豊特任参与は話す。現在のメンバーは13カ国1機関。日本の進路を考えるのにも役立つという。

GIFとは別に、国際エネルギー機関(IEA)元事務局長の田中伸男・笹川平和財団理事長は米国で80~90年代に計画された「統合型高速炉(IFR)」を選択肢に加えるよう提案する。ウラン、プルトニウム、ジルコニウムの混合金属燃料を使う異色の炉だ。

金属燃料は熱しやすく冷めにくいので発電効率がよく、事故などで電源を失っても冷却が進み爆発などの危険がないという。使用済み燃料の処理に、電気分解でプルトニウム成分を取り出す「電解型乾式再処理」を使えるのも特徴だ。不純物が多く兵器には使えない。

米エネルギー省アルゴンヌ国立研究所は、この高速炉を再処理施設と一体化して稼働試験を実施した。使用済み燃料を施設外に出さずに済む「閉じられた核燃料サイクル」が可能で、核不拡散上も好ましいとされた。

米政府が94年にプロジェクトを中止した後もアイダホ州の再処理関連施設は残っており、近年は溶けた燃料デブリの処理用に期待される。プルトニウムなど半減期の長い超ウラン元素を抽出、金属燃料に加えて燃やす。田中理事長らの試算では小型炉でも超ウラン元素を3分の1程度に減らせるという。福島第1原発の燃料デブリ処理にも生かせる可能性がある。

仏CEA前長官のベルナール・ビゴ国際熱核融合実験炉(ITER)計画機構長は「21世紀後半には核融合を電源に使えるようになる」とし、原発はそれまでの「つなぎ」と位置づける。50~100年単位でエネルギー源はどう変わるのか。その中で原発技術をどう磨き、活用して「次」へバトンタッチするのか。長期的視野で次世代炉戦略を考える必要がある。

[日経産業新聞2016年10月27日付]

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