AT&Tの巨大買収は未来を開くか

2016/10/25 3:30
保存
共有
印刷
その他

米通信大手のAT&Tがメディア大手の米タイムワーナーを買収する。買収総額が約854億ドル(9兆円弱)に達する巨大案件だが、メディアをめぐる大型再編は失敗に終わった例も多い。両社の統合がインターネットの未来をどう変えるのか注目したい。

通信会社がコンテンツの獲得や配信に力を入れるのは米国だけでなく、世界共通の傾向だ。

日本でもNTTドコモが100種類以上の雑誌をネットで読めるサービスを展開し、ソフトバンクは今秋開幕した男子バスケットの国内新リーグなどを視聴できる有料ネット放送を始めた。

従来型の通信サービスだけでは他社と差別化できず、成長戦略が描きにくくなったことがコンテンツ強化の背景にある。

AT&Tの買収決断もその延長線上にあると考えれば分かりやすい。タイムワーナーはニュース専門局のCNNや映画大手のワーナー・ブラザーズを傘下に持つ。こうした幅広い動画素材を活用することで、インフラ企業からネット企業へ脱皮する戦略だろう。

だが、注意すべきは財務力を生かして、コンテンツ企業を丸ごと買収する戦略が時代に適合しているかどうかだ。いま動画や音楽などのネット上の配信サービスで存在感を発揮するのは、米アップルやグーグルなど「プラットフォーマー」と呼ばれる企業群である。

その特徴は、多くのコンテンツ企業と利用者をつなぐサービス基盤の提供に徹していることだ。スマートフォンなど多様な機器を通じて動画や音楽を楽しめる環境を整え、特定銘柄に偏らないコンテンツを扱うことで支持を得た。

配信ビジネスの先駆けであるアップルの音楽サービスの成功も、多くのレコード会社と協力関係を築いたからだ。

逆に傘下に音楽会社を抱えていたソニーは、著作権者の意向を気にするあまり、アップルに出遅れたといわれる。コンテンツの囲い込みが常に正しい戦略とは限らないことを肝に銘じたい。

AT&Tはかつて「母なる電話会社(マ・ベル)」と呼ばれ、米国を代表する優良企業だった。今でも収益力は高いが、稼いだ資金をどこに投資し、どんな企業の将来像を描くのか苦慮してきた。

NTTをはじめとする国内の通信会社も、置かれた環境はよく似ている。大型買収の行方は日本企業にとっても示唆に富む。

日経電子版が最長2月末まで無料!
初割は1/24締切!無料期間中の解約OK!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]