「0円端末」が映す通信のゆがみ
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社によるスマートフォン(スマホ)端末の過剰な値引き問題が再燃している。
総務省は今春、スマホ販売の適正化をめざして指針を策定し、3社に順守を求めてきた。その結果、「端末0円」を掲げた店頭の販売競争は一時は沈静化したが、最近になって「割引クーポンなどと組み合わせて実質タダで端末を配る商法が復活した」などとして、同省は3社に行政処分をした。
なぜ0円端末はいけないのか。「最新のスマホが安く手に入るのは歓迎」という人も多いだろうが、過剰な割引は様々なゆがみをもたらし、そのツケは結局利用者が支払うことになるからだ。
ゆがみの一つは利用者の間での不公平だ。通信会社を頻繁に乗り換え、端末を更新する人にとって端末安売りのメリットは大きいが、安売りに必要な販売奨励金をまかなうために月々の通信料金が高止まりしている。
その結果、同じ会社、同じ端末を使い続ける人の負担が過度に重くなる。こうした現状は社会的に見て公正とはいえないだろう。
もう一つは競争環境のゆがみだ。大手通信会社が端末の安売りを武器に加入者を囲い込めば、「MVNO」と呼ばれる新規参入組が市場を開拓できる余地は小さくなり、競争は沈滞する。
日本は諸外国と比べてスマホの普及率が低いが、それもスマホに関わる通信サービスの中身や料金が魅力的でないことの証左であり、3社寡占の帰結といえる。
この状況を打破するために、総務省にはさらなる競争活性化策を求めたい。端末販売について公正取引委員会とも連携して監視を続けるとともに、新規参入組を政策的に後押しし、大手3社の対抗勢力に育てる取り組みも必要だ。
3社はサービスの中身を磨き、安売りに頼らない顧客獲得をめざすべきだ。ドコモがコンテンツサービスに力を入れるなど独自の提案に踏み出す動きもある。横並び競争からの脱却を急いでほしい。