2019年3月20日(水)

パリ協定が11月4日発効 日本も批准作業急げ
日本総合研究所理事 足達英一郎

2016/10/10 6:30
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2020年以降の温暖化ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとなる「パリ協定」が11月4日に発効することとなった。協定には第21条に「この協定は、55以上の条約の締約国であって、世界全体の温暖化ガスの総排出量のうち推計で少なくとも55%を占める温暖化ガスを排出するものが、批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した日の後30日目の日に効力を生ずる」との一文がある。欧州連合(EU)が9月30日に開催した環境閣僚理事会で協定締結を決め、4日、欧州議会がEUとして一括で批准することを承認したからだ。インドは国父ガンディーの誕生日にあたる2日に批准手続きの完了を発表した。

日本の批准作業は遅れている。9月29日の参議院代表質問で、安倍晋三首相は開会中の臨時国会(当初会期予定は11月30日まで)で審議する方針を示したが、協定発効までに批准が間に合うかどうかは予断を許さない。

気になるのは、11月7日からモロッコのマラケシュで第22回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP22)が開かれる予定となっていることだ。批准国のみを正式メンバーとするパリ協定第1回締約国会合が同時開催される可能性も高い。日本がこの会合に正式参加できないことが懸念されるからである。

これは、メンツの問題ばかりではない。協定第6条は「国際的に移転される緩和の成果を国が決定する貢献のために利用することを伴う協力的な取組」に言及している。これは、回りくどい表現だが、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)のように、他国で実現した温暖化ガス排出削減の成果を、自国の目標達成に利用できる道筋を位置づけたものと理解されている。

こうした制度に関する規則、方法及び手続きは、パリ協定第1回締約国会合で採択すると明記されている。日本は、これまでも2国間クレジット制度に注力してきており、「途上国への温暖化ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温暖化ガス排出削減・吸収へのわが国の貢献を定量的に評価する」という立場をとってきた。ただ、こうした考え方が国際的に一致して支持されているわけではなく、「国際的に移転される緩和の成果」をめぐる規則、方法及び手続きを定めるプロセスに参画することは、日本の長年の主張を反映させるうえでは極めて重要なのだ。

今回の批准作業の遅れは、他国の動きが急だったことや環太平洋経済連携協定(TPP)の審議を重視したい意向が理由として語られているが、今年4月の「地球温暖化対策計画(案)」に対するパブリックコメントで、経済界から「パリ協定の署名及び締結に向けて必要な準備を進め、――」との原案に対し、「各国の動向を踏まえつつ、パリ協定の署名および締結に向けての必要な準備を進め、――」に改めるべきだとする注文がついたことも影響があったのではないかと想像する。

同時に「長期的目標として50年までに80%の温暖化ガスの排出削減を目指す」との文言に対しても、長期目標を記載すべきではないとの意見が述べられた。

しかし、個別企業のレベルでは、「新車の二酸化炭素(CO2)排出量を50年までに10年対比90%削減。ライフサイクルCO2はゼロ、工場CO2排出も50年にはゼロ」とする大手自動車メーカーや「自らの事業活動および製品のライフサイクルを通して、50年に環境負荷をゼロにする」と宣言する大手電機メーカーが現れてきている。

仮に「日本は先頭には立たない。フォロワーで行くほうが得策」という方針決定が成り立つのなら、それでもよい。政府にも経済界にも、整合のとれた方針の一貫性が求められている。

[日経産業新聞2016年10月6日付に加筆]

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