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原発と電力自由化が両立するには

電力小売りの全面自由化が始まって半年が過ぎた。来春にはガス小売りも自由化される。電力・ガス市場は急速に姿を変えつつある。一方、政府は新しい規制基準の下で原子力発電所を当面、基幹電源として使う方針を決めた。

いずれもこれからのエネルギー政策の柱だが、両立は簡単ではない。自由化と原発は相反する側面を持つからだ。電力自由化を進めながら、競争環境下で原発をどう維持していくのか。国はその道筋を示すときだ。

廃炉の費用どう確保

経済産業省の小委員会が、電力市場の競争促進策について議論を始めた。競争を促し、消費者の選択肢を広げる自由化は着実に育てていきたい。だが、エネルギー問題は市場競争にまかせるだけでは解決できない課題がある。

そのひとつが原発との両立だ。原発は地球環境問題やエネルギー安全保障への対処に必要な電源だ。電力会社は建設にかかる巨額の投資を長い時間をかけて回収する。電力の地域独占と、かかった費用を電気料金に転嫁する総括原価方式がこれを支えてきた。

原発は建設から廃炉、使用済み燃料の再処理に至る費用を国民全体で負担することを前提に成り立ってきたシステムだ。

だが、自由化に伴って地域独占は撤廃された。政府は自由化が定着したと判断すれば、総括原価方式も撤廃することを決めている。競争にさらされる電力会社の収益は不透明さが増す。

政府は2030年時点の電源構成のうち、20~22%を原発で確保する計画を掲げる。老朽化した原発の更新(リプレース)を進めなければ、原発は減っていく。しかし、事業採算が見通せなければ新規投資は進まない。

廃炉も問題だ。大型炉1基の廃炉には約560億~約830億円が必要だ。電力会社はこの費用を電気料金に上乗せして消費者から集め、積み立てている。全国にある40基あまりの原発をすべて廃炉にするには、15年度末時点で1兆2千億円足りない。

役目を終えた古い原発を廃炉にするための備えを怠ってはならない。不足する積立金を確実に集める方法を考える必要がある。

使用済み燃料の再処理費用の一部は、新規事業者も使う送電線の利用料に上乗せし、すべての消費者が負担している。廃炉費用については現在、新規事業者から電気を買う消費者は払っていない。すべての消費者で分担する仕組みを考えるべきではないか。

この問題は本来、自由化の制度設計の段階で対処しておくべきだった。再処理費用と同じように、送電線の利用料に廃炉費用を乗せるには、国民の十分な理解を得ることが不可欠だ。新規事業者にも負担を求めるなら、原発でつくる電気を卸電力市場を通じて、誰でも販売用に調達できるようにするなどの方策を考えるべきだろう。

東京電力(現東京電力ホールディングス)福島第1原発の廃炉にも課題がある。ただし、既存原発とは別の整理が必要だ。

東電HDは21年にも原子炉の格納容器内に溶け落ちた核燃料の取り出しを始める。その費用が見込みを大幅に上回る可能性が出てきた。事故被害者への損害賠償や除染などの費用は現在、国が無利子で立て替えている。賠償の必要額は7兆円を超え、国が手当てした枠をすでに上回った。

福島事故の処理完遂を

廃炉や賠償に追加で必要となる巨額の資金を、誰が、どう負担するのか。これを議論する経産省の別の委員会も始まる。何より重要なのは廃炉の完遂と福島の復興だ。資金面の理由で作業が滞るようなことがあってはならない。

まず、事故を起こした東電HDの負担が原則だ。費用を確保するためにも、東電HDは収益力を高めることが求められる。これまで以上に踏み込んだ経営改革が不可避だ。一時的にまとまった資金が必要になる場合は、国が立て替えるなどの支援も必要だろう。

ただし、東電HDは16年3月期に、国の立て替え分として700億円を返済した。仮に追加で必要となる廃炉や賠償費用の総額が5兆円なら、東電HDが返済を終えるまでに70年かかる。8兆円なら100年以上、返し続ける。50年先、100年先まで企業が存続することを前提とする事故処理の枠組みはどこまで現実的だろうか。

一方、廃炉は数十年かかる作業だ。どれだけ時間がかかろうとやりきる覚悟と途切れない体制が必要だ。東電HDだけでできないとすれば、国全体の問題として手当てを万全にしなければならない。

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