学力テスト10年の総括を
年中行事のように漫然と続けるのではなく、その功罪を総括して今後のあり方を考えるべきだ。導入から10年目を迎えた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のことである。
調査は小学校6年生と中学校3年生を対象に、文部科学省が2007年度から始めた。国語、算数・数学は毎年実施。12年度からは理科が3年に1度行われ、19年度をめどに中3の英語も加わる。
民主党政権下の一時期は抽出調査だったが、基本的には「毎年・全員参加」で調査は繰り返されてきた。学習成果の検証を通して授業改革や制度見直しに役立てるのが大きな目的だという。
小6、中3の子どもの大半が取り組むテストを続けてきたことで詳細な学力データが積み重なり、学校での指導に生かす試みが広がってきたのは確かである。学力と家庭状況との関連もくっきり浮かび上がっている。
そうした意義は理解できるが、だからといって数十億円もの費用をかけた悉皆(しっかい)調査が本当に毎年必要かどうか、当初からの疑問は拭えていない。
「基礎的な知識は身についているが応用力には不十分」といった調査結果が示す課題は、毎年ほとんど同じだ。先日公表された今年度のテスト結果をみても、同様の傾向が浮かび上がっている。
調査の本来の目的である全体的な学力傾向を把握するには抽出調査でこと足りよう。全数調査を実施するにしても数年に1度にする手もあるはずだ。実際に理科は3年に1度の実施である。
「毎年・全員参加」の大きな弊害は、過去問題を勉強させるなど「学力コンクール」化が止まらないことである。このため文科省は今回から、都道府県別の平均正答率について表向きは小数点以下の数値を四捨五入して示した。
弥縫(びほう)策を講じるよりも、この10年を検証して制度を見直すのが本筋だろう。このままでは走り出したら止まらない公共事業と同じではないか。