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中田英寿氏がネット活用指南 世界見据えよ

(徳力基彦)

9月に開催された、日本最大規模の広告業界のイベントである「アドテック東京」。

今年は、基調講演に登壇した元サッカー選手の中田英寿氏の問題提起が非常に印象に残ったので紹介したい。

中田氏と言えば、現在の日本人選手の海外での活躍の土台を作った日本サッカー界を代表する選手の一人だが、彼が現在力を入れている活動の一つが日本酒の世界展開だ。

アドテックで中田氏は、日本酒や工芸品などの日本の伝統的な産業は世界的にも質の高いものが多いのに、インターネットの活用が遅れていることが多いと指摘。昔ながらの伝統産業にネットが入ることに大きな可能性がある、という問題提起がされていた。

例えば中田氏が力を入れている活動の一つが、「Sakenomy(サケノミー)」という日本酒好きのためのアプリ。

海外で日本食ブームが広がっている関係で、日本酒に興味を持つ人も増えているが、海外の日本通にとって最大の課題は日本語のラベルが読めないこと。そこでサケノミーではアプリで日本酒のラベルを撮影すると、英語で表示される機能を実装。日本語が分からない人でも日本酒を楽しめる環境作りを模索している。

さらに、ワインに比べると低価格が当然の日本酒のブランド化を進めるために、2013年には高木酒造と日本酒「N」を海外向けに販売。その値段は超高級ワインなみだったというから、日本酒業界からすると明らかに常識破りの手法だろう。

中田氏の姿勢で特に興味深かったのは「サッカー選手時代と今とで自分の中では違いがない。自分が面白いと感じることに全力を注いでいるだけ」と淡々と語っていた点だ。サッカーでも世界一を目指していたように、当然日本酒でも世界一を目指している。

シンプルに世界で勝つことを考えているかいないか。中田氏の発言を聞いていて、実は日本企業に欠けているのはその一点なのでは、と感じた。

当日の議論でも問題になったが、多くの日本企業は英語のホームページを持っていない。大企業でもそうなのだから、日本酒のような伝統産業が英語のホームページを開設する余裕がないのはある意味当然だろう。

ただ、海外の人々から見れば、英語のホームページがないというのは、世界での勝負を最初から捨てているに等しい行為でもある。

インターネットやスマホの進化により、誰でも世界で勝負しやすい時代になっているのに、多くの日本企業は最初からその勝負を捨てて、国内のみの勝負に特化してしまっているのだ。

実は日本で日本一になってから世界を目指すよりも、最初から世界を見ることで日本よりも先に世界で成功するケースが増えてきている。

アドテックの午後のセッションでも、日本女子プロ野球機構の理事をされている石井宏司氏が、女子プロ野球の世界において日本が世界の中心になるという大きな構想をぶち上げていたし、プロ野球パリーグのマーケティングに携わる根岸友喜氏も、日本で確立したシステムを海外に販売する構想を披露していた。

人口減少が確実視される日本においては、いわゆる製品やサービスだけでなくスポーツのような産業も世界を最初から見据える必要がある時代に突入しているわけだ。

日本企業が世界で勝つために一番必要なのは、最初から世界を見据えるという意識改革なのかもしれない。

(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)

[日経MJ2016年9月30日付]

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