クチコミの威力 SNSでマーケティング
ツイッタージャパン代表取締役 笹本裕
米グーグルの検索サービスが日本語で始まったのは2000年9月でした。それから16年の年月がたちました。その間に通信環境や使用機器、使い方など、国内のインターネットは大きく変わりました。今では検索サービスは私たちにとって、なくてはならないものになっているのではないでしょうか。

かつてネットで情報を探すときには、まずポータルサイトにアクセスするのが当たり前でした。そこに表示されているディレクトリー(要覧)を利用するのが一般的で、検索して探すという考え方は希薄でした。
グーグルの登場をきっかけに、検索エンジンという言葉が広がりました。さらに検索キーワードを入れるためのボックスがついたバーをダウンロードすることがはやりました。ブラウザーにいくつもの検索バーを入れた方も多いのではないでしょうか。気がつけば、ブラウザーに加えるバーは姿を消し、どのブラウザーでもURL欄から直接キーワード検索ができるようになっています。
ここ数年、ソーシャルメディアでの検索も増えています。特定の情報を見たいときに使われるケースが多いようです。ソーシャルメディアで検索をするとどのような情報を得られるのでしょうか。それはソーシャルメディアの特性を思い出していただければわかると思います。
ソーシャルメディアはそれぞれの人の思いや考えが、文章や映像などの形で集まる場所です。例えば人気のあるファストフードチェーンが新しいメニューを出したとしましょう。そのメニューを試した各地の人々がそのメニューを食べたという事実(多くの場合は写真付き)と、「おいしかった」や「おいしくなかった」といった感想を添えてソーシャルメディアに投稿していきます。
まだそのメニューを食べていない人の視点から見てみましょう。
「広告やニュースなどでそのメニューが出たのは知っているけれども、食べておいたほうがいいだろうか」と考える状況は、皆さんも経験したことがあると思います。「食べた人たちはおいしいと感じたのだろうか」という疑問も出てくるでしょう。実際にどのくらいの人たちが食べていて、どのくらい話題になっているのかも気になるかもしれません。
このようなときに気軽に使えるのがソーシャルメディアです。実際に食べた人たちの生の声を得られるからです。ソーシャルメディアでそのメニュー名で検索すれば、食べた人たちの感想を知ることができます。
米調査会社のニールセンによると「センスの良いものやおもしろいものを見たい」「最新の情報や世の中の情報を知りたい」などの目的でソーシャルメディアを使う人が多いようです。
「情報収集に使われることが多い」という結果が出たツイッターの場合は、スマートフォン利用者の34%がツイッターで検索しています。特に10代の利用者では、75%がツイッターで検索し、しかも、そのうちの58%は毎日利用くださっているそうです。
この現象を上手に利用すれば、低コストでバイラル(クチコミ)マーケティングができます。芸能人やスポーツ選手など自分が尊敬している人たちからの「ものすごくおいしかったから、食べたほうがいいよ」という一言ほど強力な誘導はありません。それは友達からの一言でも同じです。
企業としては「そのメニューが存在することを知らしめる」と同時に「メニューを試した人がソーシャルメディアで情報を共有したくなる状況をつくる」ことが成功のカギになりそうです。
ほとんどのソーシャルメディアは無料で始められます。ソーシャルメディアによるクチコミマーケティングを試してみてはいかがでしょうか。
[日経産業新聞2016年9月29日付]