2019年2月19日(火)

ユーチューブの映像工房 360度3D撮影に力
野呂 エイシロウ(放送作家・戦略PRコンサルタント)

2016/9/29 6:30
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「ユーチューブ・ホラープロジェクト」という面白いイベントが今月、六本木ヒルズ(東京・港)の動画制作空間「ユーチューブスペース」で開かれた。米ニューヨークや英ロンドンなど世界6カ国7カ所で行われている、ハロウィーンにあわせての企画である。

リング状に取り付けた16個のカメラで、360度撮影できる

リング状に取り付けた16個のカメラで、360度撮影できる

日本では映画「呪怨」でおなじみの清水崇監督が、6月公開の映画「貞子 VS 伽椰子」の関連動画をこのスペースで撮影したという。

筆者はテレビ番組「特命リサーチ200X」などで恐怖企画を何度もやったが、実は怖い物が苦手。それでも興味を引かれ、イベントに先駆けて足を運んだ。

先程の「貞子 VS 伽椰子」の動画のセットで、日本全国のユーチューブ利用者が動画を撮影できるというのだ。プロの映画監督と同じセット、機材を使える。さらに今回の目玉は、360度3D動画というところにある。特殊なゴーグルをつけて見ると、立体に見えるという。

早速筆者も試してみると…これはマジですごい。体験したことがない新感覚の映像だ。

奥行きが明確で、手前のものと奥のものとがはっきり区別できる。実際にその場にいる感覚さえ感じられ、今までの映像体験とは明らかに違う。

この技術を支えているのがユーチューブの親会社であるグーグルが開発した「JUMP」というシステムである。

「JUMPカメラリング」という特殊なカメラと「JUMPアセンブラ」という編集機器からできている。今回、アジア初お目見えになる。

JUMPカメラリングは直径50センチぐらいの輪に、外側を向けて小型カメラ「GoPro(ゴープロ)」を16台取り付けてある。これによって360度の風景を死角なく撮影できる。高画質の4Kカメラを使っているので立体感が増すそうだ。

このカメラでの撮影は非常に難しい。今回の企画も360度の動画に詳しいライフスタイル(東京・港)が技術協力している。「360度写るのでカメラマンが同行できません。三脚のみです。監督がその場で演技指導することもできません」と永田雅裕社長は言う。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身、46歳。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身、46歳。

通常の映画やテレビの場合、セットは片側だけ作ればいいし、カメラの後ろにはカメラマンやディレクター、僕ら放送作家もいる。通常のテレビ番組収録なら50人近い。

それが360度カメラでは写り込んでしまう。だからJUMPのカメラの場合は、別室で確認しなければならない。注意しなければケーブルや照明まで写る。

編集機器のJUMPアセンブラの役割も重要だ。実は16台のカメラの映像を取り込むというのは非常に難しいことらしい。当然ながらデータ量が16倍あり、さらに映像の継ぎ目をきれいに見せなければならない。

ハードディスクに取り込むだけでも通常なら何百時間もかかる。それを専用ソフトで短時間処理できる。専用のカメラには、専用の編集機器も必要というわけだ。

高価なこのシステムをユーチューバーと呼ばれる映像制作者たちに貸し出しているというから、グーグルは太っ腹だ。コンテンツの普及になればと考えているのだろう。

映像技術が進み、現実とバーチャルの世界の境目がわからない時代がくるのではないか。そして、テレビマンなどのプロ以上の速度で、ユーチューバーなどの映像表現者は新しいものに飛びつき、時代を作ってゆくのだろうと実感した。

[日経MJ2016年9月26日付]

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