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メダルは救い、こだわった 車いすテニス・国枝慎吾

2016/9/17 3:30
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車いすテニス男子、国枝慎吾(ユニクロ)のリオデジャネイロ・パラリンピックが終わった。15日のダブルス3位決定戦で日本人対決を制して銅メダル。試合後、長年のペアの相手、斎田悟司(シグマクシス)と抱き合って号泣した姿には、ここに至るまでの労苦がにじみ出ていた。

車いすテニス男子ダブルス3位決定戦で三木・真田組に勝った国枝(右)・斎田組=寺沢将幸撮影

車いすテニス男子ダブルス3位決定戦で三木・真田組に勝った国枝(右)・斎田組=寺沢将幸撮影

「苦しい1年だったです。昨年にパラリンピックがあればな、と何度思ったことか」。シングルスの準々決勝でベルギーの27歳、ジェラールに負けて目標のパラリンピック3連覇が絶たれた後、国枝はしみじみ語った。

国枝の言う昨年はバラ色の年。5度目となるシングルスの年間グランドスラム優勝(3大会)を達成し、ダブルスも全豪、全仏両オープンを制覇した。

翻って今年。右肘の痛みを抱えながら出場した1月の全豪で初戦敗退。4月に手術を受けて5月に復帰したものの、肘にたまった水を抜きながらのプレーで、6月に痛みが再発した。そこから1カ月以上、ラケットを握らずリハビリに専念。

この時期、「夢にテニスをするところがやたらに出てきた。寝ながらフォアハンドを打って目覚めることが何回もあった」という。4年前のロンドン大会前にも右肘の手術をしたが、回復は順調で戴冠。これほどテニスから離れた期間は経験がなく、プレーを渇望する深層心理が現れたのか。

結局、現実の試合はリオに乗り込む前にカナダでの大会に出ただけで、「試合勘が完全に戻り切らなかった」。腕の振り、ボールへの入り方などどうにも居心地が悪く、リオでは試合後も練習を重ねたが「最後まで感覚は戻らなかった」と話した。

3位決定戦は果敢に攻めてくる三木拓也(トヨタ自動車)真田卓(フリー)組に対し、国枝たちはベースライン深くから山なりの球を打って相手のミスを誘う守りのテニスに終始。「エキサイティングかどうか疑問符がつくが、その辺は割り切った。この内容で勘弁してよというところ」

王者の風格をかなぐり捨ててでもメダルが欲しい。「手ぶらで帰るのか、そうじゃないかは大きな差と自分にプレッシャーをかけていたので、それが達成できた」ことが涙の理由という。

車いすテニス界には世代交代の波が確実に訪れていて、16日に男子シングルス決勝を戦うのは24歳と18歳の英国選手同士。この2人に、国枝らはダブルス準決勝でストレート負けを喫した。「英国ペアはガンガン打ち込んできて、ある程度応戦したが、うまくいかなかった」。実力差を認めざるを得ない。

国枝も32歳。もちろん、引退するつもりはない。「このメダルに救われてツアーに戻れる。今後、メダルが心の支えになってくれることは確かだと思う」

2週間後に米国である大会にエントリーしている。帰国して体のチェックをしてから、参加するかどうか決めるという。「戻りたいですね、日常に。普通のツアーに戻ることが一番やりたいこと」と国枝。

12日時点の世界ランクは9位まで落ち、日本選手トップの座を真田(8位)に譲った。グランドスラムに出られるのは8位までなので、大会に出てポイントを稼がないと出場すら危うい。

リオでは「僕自身のプレーをしたいという思いが強かったが、それが出せなかったのが残念」。特別な舞台であるがゆえ、パラリンピアンという仮面をかぶり、勝負にこだわった面があるのだろう。仮面を脱ぎ捨て、本来のプレーでグランドスラムを席巻した姿を取り戻したい。

(摂待卓)

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