省庁移転がこれでは地方創生はかすむ

2016/9/13 3:30
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政府が中央省庁などの地方移転に関する今後の取り組みについてまとめた。焦点だった消費者庁は一部移転するにとどまり、全面的に移転する予定の文化庁も明確な時期は示さなかった。これでは安倍政権が掲げる地方創生は失速しかねないのではないか。

東京一極集中の是正を狙って政府が打ち出したのが中央省庁や独立行政法人などの地方移転だった。東京、神奈川、千葉、埼玉を除く43道府県に誘致したい政府機関を提案するように求め、それに基づいて検討を進めてきた。

今回、消費者庁は徳島に、総務省統計局は和歌山にそれぞれ拠点を設けて一部の業務を移すことになった。これで全面移転する省庁は文化庁のみと正式に決まった。

今回の決定はテレビ会議システムなどを使って実際に徳島などで実証実験した結果という。政府がまとめた検証内容をみると「(テレビ会議では)多人数での意見調整がしづらい」「全国からのアクセスが問題」などと、移転できない理由ばかり並んでいる。

国会への対応や危機管理の面で地方に移しづらい業務は確かにあるだろう。一方で、地方への移転は政府内の仕事の進め方や職員の働き方を見直すきっかけにすべきだったのではないか。

政府の研究機関や研修機関などの移転も進んでいない。20機関程度を移転対象にしているが、具体的にどの部門を移すのかはまだ決まっていない。「地方大学との連携拠点を設ける」とするだけで、人材がどの程度移るのかよくわからないような事例も多い。

政府は全国の自治体が策定した地方創生に関する総合戦略のなかで、具体的な数値目標を列記することを求めてきた。政府自身、2020年までに東京圏への転入超過数をゼロにする目標を打ち出している。

東京圏への15年の転入超過数は約12万人と、14年よりもむしろ1万人増えている。ここで政府機関の移転が腰砕けに終わったら、目標の達成はさらに遠のくだろう。

地方を活性化するためには、障害となる規制をなくすなど息の長い取り組みが必要だ。何よりも自治体や地域企業、住民の努力にかかっている。

そういう意味で政府機関の地方移転は手段のひとつでしかないといえるものの、地方創生という旗がこれでさらにかすみはしないか心配だ。

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