AR/VR時代だからこそ重要なリアル体験 (藤元健太郎)

2016/9/11 6:30
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世界的イベント、リオ五輪が終わった。閉会式では東京五輪へ向けた引き継ぎセレモニーも行われ、世界が注目する中、2020年に向けた日本のメッセージが発信された。総理のマリオ姿が何よりも話題になったが、実施予定の競技がフィールドにプロジェクションマッピングとCGで表現されたところも未来の技術として注目された。

大行列ができた「DMM.PLANETS」。膝まで浸す水にコイや花の映像が投影された

大行列ができた「DMM.PLANETS」。膝まで浸す水にコイや花の映像が投影された

こうした技術はAR(拡張現実)とも呼ばれるが、現実と仮想を組み合わせる表現からミクスト・リアリティー(複合現実)とも呼ばれる。

VR(仮想現実)技術も急速に進んでおり、ゴーグル型のHMD(ヘッドマウントディスプレー)の没入感の中で、東京にいながらリオデジャネイロの街にいるかのような体験をすることは今や非常に簡単になりつつある。

今回のオリンピックでもNBCやBBCなどいくつかの放送局が360度のVR動画として配信していた。東京五輪では世界中どこにいてもまるで東京にいるかのような仮想体験放送は普通になるだろう。

しかし、だからこそリアルな場所にいて体験できる新しい価値がますます重要になるとも言える。今回の閉会式も、その場で体験したいと感じた人は多かっただろう。プロジェクションマッピングなどの技術は現実の場所の価値を様々に変えることができるのだ。

この夏、話題になったのがチームラボとDMM.com(東京・渋谷)が開催した「DMM.PLANETS」だ。東京・お台場のフジテレビのイベントの目玉となり、期間の後半は数時間待ちの行列が毎日できるほど話題になった。

これは様々なデジタル技術を駆使しつつも、リアルに体験することに重きをおいたアートイベントだ。来場者はまず入り口ではだしになることを求められる。足の裏の感覚も重要な体験のひとつになるからだ。

最初から、クッションが敷き詰められた部屋で自分の体のバランスを取らなければならないという体験をさせられる。

膝まで水につかる部屋では、水面にプロジェクションマッピングで投影された花やコイの映像を見ながら冷たい水の感覚を身体でしっかり味わう。コイは人に当たると花になって散っていく。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

ドーム状の空間では暗闇にチョウが舞う。手元のスマートフォンで好きなチョウを選んで送信すれば、そのチョウが空間に現れる。まさに仮想空間と現実空間によるミクスト・リアリティーの体験そのものである。

お台場に来なければ体験できないということで、わざわざ遠方からやってきてしかも何時間も並んで体験したいと思わせる価値が生まれる。そして体験するとその感想を交流サイト(SNS)で次々と拡散し、さらに人々に行ってみたいと思わせる効果が増殖する。

「誰でもどこでも手軽に仮想体験できる時代」にはますます、実際に経験しなければ分からない「生」の体験価値を求める人が増える。

ポケモンGOも現実世界を組み合わせたゲームであったため、人々が現実世界を移動した。観光資源が乏しくても、アイデアと工夫で人々を惹きつけるイベントやコンテンツを作ることは可能だ。

リアル空間をミクスト・リアリティーで体験の場にしていくアプローチは、2020年に向けて観光やリアル店舗ビジネスにおける重要なテーマになるだろう。

(D4DR社長)

〔日経MJ2016年9月9日付〕

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