頂点を渇望 自転車(下肢障害)藤田征樹
自転車の藤田征樹(日立建機)にとって3回目となる今回のパラリンピックは、初めて世界チャンピオンとして臨む大会になる。
昨年、スイスで開かれたロード世界選手権のロードレースで優勝。覇者だけが許されるジャージー「マイヨ・アルカンシエル」を獲得した。虹のジャージーを背負うプレッシャーについて「大いにある。その中で勝つことは並大抵のことではなく、難しいチャレンジ。でもそれができるかも楽しみ」と力を込める。

東海大トライアスロン部だった19歳の時、交通事故で両足の膝下を失った。義足をつけて2年後に出たトライアスロンの大会で見初められ、自転車に転向。障害の重いC1から軽いC5まである中のC3クラスで戦い、北京大会は銀2つ銅1つ、ロンドン大会でも銅1つ。日本のエースは、今回こそはと金メダルを渇望している。
ロードでは7月に行われたワールドカップ(W杯)のタイムトライアルでも、2位以下に1分以上の大差をつけて優勝。「ここまで差がついたのは予想外。でもライバルもコンディションがよくなさそうな選手がいたし」と慎重だが、リオと同じフラットなコースでの結果に「戦えることが確認できた」とまんざらでもない。
3月のトラック世界選手権では個人追い抜き(3キロ)で4位。表彰台まで「手応えはある。もう少し工夫をしたい」。トラックの1キロタイムトライアルも含め、ロードとの二兎(にと)を追う構えだ。「複数の種目で結果を残せているので、そういう戦い方になる。どこかで力を抜くという考え方はない」と決然と話す。
エンジニアとしてフルタイム勤務を続けながら競技にとり組み、結果を残してきた自負があった。だが、世界のレベルがあがり、実力差がない「団子状態」(藤田)から抜け出すため、今春から練習に専念する日もある柔軟な勤務体系を会社に認めてもらった。
「今までのやり方をかえる意味で悔しい部分もあるが、結果を出してぎりぎりのところまでやれたから、わかってくれた」。今まで以上に、周囲への感謝の念を抱いて臨むパラリンピックになる。
=敬称略