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スマート家電、「統一仕様」対応が普及の鍵

ITジャーナリスト/コンサルタント 林信行

ここ数年、あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」に関するニュースが話題になっていた。今年は人工知能(AI)に取って代わられ、トーンダウンの印象があるかもしれない。だが、実用化に向けた動きが静かに進んでいる。

最新の技術が生活や文化に与える影響を25年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆した他、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

実用的なIoT製品づくりには、様々な課題がある。中でも重要なのが回線内蔵式にするか、スマートフォン(スマホ)との連携式にするかだ。多くのIoT製品は後者を取っている。しかし、機器ごとにアプリを入れるのはいいことばかりではない。

操作しようとしても目当てのアプリが見つからなかったりする。同種のIoT製品でもメーカーやモデルが異なれば、それまでの設定やデータを引き継げないという問題もあった。無線LANとの接続設定が難しいというハードルもあった。

そうしたなかで先手を打っていたのが米アップルだ。2014年にリリースした基本ソフト「iOS8」から、家庭用IoT機器(スマート家電)を統一的に管理するための基盤技術「ホームキット」の整備を始めた。

現行の基本ソフト「iOS9」でも、スマホから施錠・解錠できる玄関や車庫用のロック、明るさや色を変えられる電球など、アップルのホームキットの技術に対応したスマート家電であれば、音声で操作できる。筆者も「仕事部屋の電気を消して」といった音声操作を日常的に行っている。

近く登場する予定の基本ソフト「iOS10」では、加湿器や空気清浄機を含めた空調機器や玄関のチャイム(カメラ付きを含む)の標準化も行う。部屋単位でスマート家電を細かく操作するアプリが用意されたり、外出時や帰宅時、定時など特定条件で自動的にスマート家電を制御できるようになる。

面倒になりがちな設定についても、製品に貼られたバーコードのようなマークをアイフォーンのカメラで撮影するだけですむようにする。アップルらしい使いやすさの工夫だ。新時代の家電製品の使い方をアップルが1ジャンルずつ丁寧にデザインしている様子がうかがえる。

米グーグルもアップルと同様な技術「ウィーブ」を開発している。グーグルも技術開発力が高いので、アップルより後出しになる以上、劣るようなものは出してこないだろう。

いずれスマート家電はアップルとグーグルの両方に対応すれば、世界中のスマホから統一された方法で利用できるようになると予想される。他社製品に乗り換えるたびに操作を1から覚えるといった手間もなくなる。

ショッキングなことが1つある。今年の夏に開かれたアップルの会議では、米ゼネラル・エレクトリック(GE)やオランダのフィリップス、イタリアのデロンギ、中国のハイアールなど72社がアップルのIoT技術に対応すると表明した。ただ、その72社の中に日本メーカーが含まれていなかった。

利用者と家電の接点となるリモコンをアップルに明け渡してしまう側面もあり、それを恐れているのかもしれない。スマート家電の技術開発の主導権をアップルに握られてしまう懸念もある。だが、利便性を犠牲にすると、結局は顧客を奪われかねない。

一部の日本メーカーのスマート家電は品質はもちろん、デザインや操作性のレベルが大幅に向上している。残念ながら、そうしたレベルアップの大半は製品単位にとどまっている。多くの消費者は様々なメーカーの製品を併用している。そうした状況を考えて設計している製品が少ない印象はぬぐえない。

日本メーカーには、まずは数モデルでもいいからアップルやグーグルの標準に対応したスマート家電を出してほしい。

[日経産業新聞2016年9月1日付]

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