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乗り合いバス復調の兆し、利用4年で13.2%増
日本総合研究所理事 足達英一郎

2016/9/5 6:30
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 国内の温暖化ガス排出削減・吸収量の確保により、2030年度に13年度比で26.0%減を目指すとした、20年以降の削減に関するわが国の約束草案は、部門別の排出削減量の目安を盛り込んでいる。これによれば、産業部門の削減率はマイナス6.5%減なのに対し、運輸部門では27.6%減という大きな削減率が想定されている。

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 直近(14年度)の運輸部門の排出量の47.5%は自家用乗用車が占め、バスの比率は僅か1.9%にすぎない。ただし、輸送量当たりの二酸化炭素(CO2)排出量(旅客)は、自家用乗用車が133グラム(人キロ当たり)で、バスは53グラム(同)と半分以下だ。単純計算すれば、自家用乗用車を利用する人の半分がバス利用に切り替えたなら、それだけで14.3%減の削減ができることになる。

 こうした計算は、従来なら机上の空論としてしりぞけられてきた。人々は自家用乗用車の利便性を手放すはずはないし、一方で乗り合いバスは利用しようにも、路線はどんどん廃止され、路線が存続していても運行本数は激減して不便極まりないものと考えられてきたからである。

 ところがここ数年、興味深い変化が観察されている。国土交通省の自動車輸送統計調査で、乗り合いバスの輸送人キロが11年度以降、一貫して増大に転じているのだ。15年度までの4年間で13.2%増、年率にしても平均約3.2%の増加である。こうした、乗り合いバス復調の兆しは、地方でも散見され、11年と14年の3カ年の比較では、輸送人員の増加は、人口が増大している一部の都市部だけではなく、人口が減少している17県でも確認できるという。一体、こうした変化の背景には何があるのだろうか。

 総務省の全国消費実態調査によれば、1000世帯当たりの自動車の所有数量は、1414台(09年)から1377台(14年)と2.6%減少している。加えて、運転免許証の自主返納(申請による運転免許取り消し)件数は、高齢化の進展で11年からの5年間で急増し続けており、15年までの累積で82万人余りの人が自動車の運転をやめていることがわかる。

 むろん、自家用乗用車利用をやめた人すべてが、乗り合いバス利用に切り替えたと見ることはできない。ただ、一定の関係をうかがわせる調査結果もある。

 関東運輸局が毎年、実施している市民意識調査は、東京50キロメートルの圏内と圏外で、おのおの「自分で自由に運転できる車がある人」のうち「公共交通をほとんど利用しない人」の割合を経年的に明らかにしている。11年から15年にその割合は、東京50キロメートルの圏内で37.9%から35.7%に、圏外でも74.9%から69.4%に減少している。自分で自由に運転できる車がある人でも、公共交通を利用することが増えているという傾向が、調査結果からは見て取れる。この公共交通のなかには、当然、乗り合いバスも含まれよう。

 従来の国内の温暖化ガス排出削減対策では、国の基幹産業である自動車業界への遠慮もあってか、旅客の公共交通利用へのシフトが強力に推進されたとは言い難い。しかし、カーシェアリングの普及や自動運転技術の進展などで、自家用乗用車と公共交通の境界は変わりつつある。また、海外ではバス高速輸送システムによる成功事例も出てきている。

 わが国では、50年に向けた長期の低炭素ビジョンの策定に向けた議論が繰り広げられている。乗り合いバス復調の兆しを的確に捉えた、省庁横断の政策形成が強く求められる。

[日経産業新聞2016年9月1日付]


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