2019年2月23日(土)

金融緩和では止められない成長力の低下

2016/8/30 3:30
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世界の中央銀行首脳らが集まる毎夏恒例の国際経済シンポジウムが米国で開かれた。将来に向けて強力な金融政策の枠組みをどうつくるかがテーマだったが、むしろ浮かび上がったのは経済の勢いが構造的に弱まっているときには金融政策が効果を発揮しにくいという点だった。

中央銀行が不況や市場の混乱に対処するため新しい手段を模索するのは当然だが、経済の構造問題の解決まで期待するのは無理がある。各国政府は金融政策依存に陥らず、潜在的な成長力を引き上げる方策に全力をあげるべきだ。

シンポジウムで講演したイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は、「米国の長期的な政策金利が従来よりかなり低い3%程度にとどまるとの見方が強まっている」と指摘。米国の利上げが以前に比べて小幅にとどまる可能性を示唆すると同時に、将来経済が悪化した際に利下げできる余地も狭まっているとの認識を示した。

政策金利が低くなる理由として、経済を刺激も冷やしもしない「中立金利」(物価上昇分を除く実質水準)が大幅に低下している点をあげた。その背景には生産年齢人口の伸び鈍化や低生産性に伴う潜在成長率の低下があるとの見方を示した。

状況は日欧ではさらに深刻である。潜在成長力が米国より低く、日本を含め中立金利がマイナスになっているとみられる国も少なくないからだ。そうした環境下では、経済に刺激を与えようとすれば、中央銀行は一段と踏み込んだ政策対応に出ざるをえなくなる。

日銀や欧州中央銀行(ECB)はすでにマイナス金利にコマを進めた。国際シンポジウムでは先進国が取りうる将来的な措置として、2%のインフレ目標を引き上げたり、名目国内総生産(GDP)目標などを導入したりして、緩和をさらに強化する政策の是非も論じられた。

中央銀行は経済状況に応じて柔軟に政策手段を検討する必要がある。だがその際は、金融市場の不安定化など副作用にも十分目を配らなければならない。

いちばん重要なのは、各国の政府や、企業、金融機関が根本的な課題である潜在成長力の引き上げに向けて努力を傾けることだ。生産性上昇で成長力が高まれば、マイナス金利などの非常手段を取る必要性も低下する。中央銀行に負担をかけすぎてはならない。

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