2019年2月19日(火)

NHNコミコ、アニメ有料先行配信 視聴率より拡散重視

2016/8/20 6:30
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NHNコミコ(東京・港)がユニークなアニメ配信に乗り出した。マンガアプリで連載する人気作「ReLIFE(リライフ)」のテレビアニメ放送に先駆け、公式サイトで全13話を有料配信している。「まずテレビ」の常識をあっさり崩した。背景にはテレビの特性を生かしたしたたかな戦略がある。

マンガアプリ「comico」はすべての連載作品を無料で読め、若者の人気が高い。スマートフォンの画面を縦向きに流して読む。

国内の公式連載は120作品を超え、累計ダウンロードは1300万件。「リライフ」は140話を掲載し、同アプリを代表する人気作だ。

アニメの先行配信の舞台は公式サイト「リライフチャンネル」。テレビ放送開始の1週間前の6月24日に始めた。第1話は無料で、第2話以降は1話を前後半に分けてそれぞれ120円で視聴できる。テレビ放送の1時間前にあたる毎週金曜午後11時からは、その日の放送分も無料で見られる。

アニメ化の目的は2つあった。1つ目は書籍の販売増。2つ目は人気マンガのアニメ化という成功例を作り、コミコにマンガを描く作家の意欲向上につなげることだ。ただ「当初はネット配信だけで十分と考えていた」とコミコ・コンテンツビジネスチームの吹田沙矢エグゼクティブプロデューサーは打ち明ける。

方針を転換したのは「テレビ放送の実績が海外の視聴者には特別に映るとわかった」からだ。テレビ放送の有無で動画サイトでの買い付け価格が変動することもあり、アニメの収益化にも影響が出かねない。

「テレビは海外展開のための宣伝」と割り切って、東京メトロポリタンテレビジョン(東京MX)の放送枠を購入した。地上波であれば、放送局や放送地域にはこだわらなかった。

テレビで放送したアニメをネット配信やブルーレイ・ディスクに振り向け、収益を稼ぐのがこれまでの常道。「東京MXが柔軟に対応してくれた」(吹田氏)というが、地上波に先立つコミコの配信戦略はテレビの視聴率低下につながりかねない禁じ手に見える。

ただ、テレビは無料視聴が当たり前で、放送後はネットの海賊版も防ぎようがない。そこで、有料による先行配信の出番だ。テレビ放送を待てない熱烈なファンを取り込み、収益化を狙った。

放送開始1時間前の無料配信にもワケがある。アプリで連載するリライフは毎週金曜の午後11時に最新話を更新する。マンガとアニメの配信を重ねることで、ファンの熱量を最大限に高める。この熱量がツイッターなど交流サイト(SNS)での拡散力に変わる。

「重視するのは視聴率よりネット上の拡散」と吹田氏。ツイッターのツイート数は午前0時のテレビ放送開始後に最高潮を迎え、トレンド一覧の常連になっている。アニメが話題になり、書店でリライフのコミックが棚置きから平積みに「格上げ」となるなど、アニメ化の好影響が見込み通りに波及している。

リライフはアニメ化と歩調を合わせ、音楽ソフトや舞台化などにもビジネスを広げている。スマホ発のコンテンツがテレビを巧みに利用した好例になりそうだ。

(新田祐司)

[日経MJ2016年8月17日付]

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