2019年9月19日(木)

春秋

2016/8/11 3:30
保存
共有
印刷
その他

古代ギリシャの盟主アテネは黄金期を築いたペリクレスなきあと、扇動政治家が相次いだ。その一人のクレオンという人物の演説に、彼が市民たちをどう思っているか、つい正直に語ったくだりがある。歴史家トゥキュディデスが「戦史」(久保正彰訳)に記している。

▼「諸君はつねづね、話を目で眺め、事実を耳で聞くという悪癖をつちかってきた」。口達者な者の話にはその通りと思って目を奪われ、事実を自分で見ずに耳から信じる、との意味だ。そんな市民の扇動は難しくないということらしい。「奇矯な論理でたぶらかされやすいことにかけては、諸君はまったく得がたいかも(・・)だ」

▼米共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏も、大衆は「話を目で眺め、事実を耳で聞く」ものと考えているのだろうか。経済政策の演説で「多くの労働者の税率をゼロにする」と強調したが、所得税改革の詳細は明らかでなく、実現できるかは分からない。有権者は話をうのみにするだろうと思っているなら失礼千万だ。

▼英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票でも、離脱派の英国独立党党首らは同国のEUへの拠出金を過大に言い立てた。党首は投票後に誤りを認めて辞任したが、ウソに惑わされる危険はどの国にもある。有権者自身、事実をつかむ力を問われてもいよう。扇動者の横行を許していたと、後世に伝わらないためにも。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。