2019年2月20日(水)

「深い学び」実現へ学校の創意を重んじよ

2016/8/3 3:30
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教育を変えようという意気込みはわかるが、いささか前のめりではないか。学習指導要領の改訂に向け、中央教育審議会が公表した素案のことである。

文部科学省は新指導要領を2020年度から小中高校で順次実施する。その後10年間、グローバル化や人口減が進む時代の学校教育の指針となるものだ。

それだけに今回の素案は、従来の指導要領の中心だった「何を学ぶか」に加えて「どのように学ぶか」、社会とのかかわりで「何ができるようになるか」の視点を強調している。

方向性そのものは妥当だ。これからの時代はたんに知識の量だけでなく、それを活用し、自分の頭で考えられるかどうかが問われる。詰め込みと「ゆとり」の間で揺れ動いてきた学校教育の「第3の道」でもあるだろう。

そのための授業改革として、全教科への「アクティブ・ラーニング」(AL)導入を促した。一方通行の知識伝授でなく、討論などを通じて理解を深める方法だ。これにより「主体的・対話的で深い学び」の実現を図るという。

しかし「深い学び」への到達は実際には容易ではない。

素案には観念的な言葉が並ぶが、先生たち一人ひとりが、子どもたちの実情に合わせた多様な手法を繰り出す必要がある。現場での相当な研究と準備が欠かせないだろう。そもそも限られた授業時数のなかで、学習の「量」と「質」の二兎(にと)を追うのは並大抵なことではない。

文科省は具体的な指導事例を示す方針だという。問題なのは、それによって授業がパターン化しかねないことだ。新指導要領の趣旨はきちんと伝えつつ、具体的な手法は現場に委ねて創意工夫を尊重すべきだ。上からの押しつけでは学校は萎縮し、注文をこなすだけで疲弊するに違いない。

もとよりアクティブ・ラーニングに類型的な解はない。さまざまな学校現場が、さまざまな試行を経て新しい授業を探っていくしかあるまい。「これがALだ」といった画一化は禁物だ。

「深い学び」実現のためには教員の定数見直しや処遇改善を含めた条件整備も欠かせない。いま、多くの先生たちが事務作業や部活動の顧問などで忙殺され、長時間労働を強いられている。そんな環境下で、新指導要領の精神が生かせるだろうか。

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