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体操の内村、執念の無心 魔物を鎮めて団体金へ

2016/8/3 3:30
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4年に1度の大勝負との向き合い方は人それぞれだが、3度目の五輪に臨む体操男子のエース内村航平(コナミスポーツ)はとにかく肩の力が抜けている。「五輪なのにここまで特別感がないと、逆に寂しい」と冗談めかすほどだ。

内村は4年前の教訓を生かし自然体で臨む(先月30日、リオデジャネイロ)=写真 玉井良幸

内村は4年前の教訓を生かし自然体で臨む(先月30日、リオデジャネイロ)=写真 玉井良幸

4年前のロンドンで「五輪には魔物がいた」とつぶやいたのが懐かしい。どこか使い古された言葉も、絶対王者の口から発せられると重く響いた。

公式練習からミスが続き、世界選手権でいつも1位だった個人予選はまさかの9位。個人総合で金メダル、床運動でも銀メダルを獲得したが、一番欲していた団体金メダルには遠く及ばず、自身も最終演技者としてあん馬で崩れるように着地した。銀メダルを死守するのがやっとだった。

三たび迎えた五輪。言葉と笑顔に無理がない27歳の姿からは、魔物を鎮める術(すべ)を会得したと見える。「結局、自分で作り出していたものだと思う。いつも結果にこだわらず、内容重視で練習通りの演技を心がけてきたのに、体操人生で一番いい演技、一番いい結果を求めた時点でダメだった」。だから2016年の誓いは「無心、無欲」にした。

昨年の世界選手権で念願の団体世界一、さらに個人総合6連覇を達成した自信と経験が、内村を自然体で五輪に向かわせているのだろう。「自分の中では結構いっぱいいっぱい」と語る高難度の演技構成も、油断や邪念を生まないという点では好循環をもたらす。

4月の全日本選手権ではミスが重なり、「自分に怒りを感じる」といらだちを見せた。1カ月後のNHK杯。床運動の「後方2回宙返り2回ひねり」に跳馬の「リ・シャオペン」、鉄棒の「カッシーナ」と大技を盛り込んだ6種目合計の演技価値点(Dスコア)39.4点の構成を自身初めてノーミスでやってのけた。体操を極めようとする姿勢が他の追随を許さない。

代表が出そろった6月以降、合宿でも4年前とは別人の内村がいた。ロンドンでは連日、試合さながらの通し練習を自らに課した。鬼気迫る姿は自分のためであり、チームメートを鼓舞する意味もあった。「周りとの温度差は感じていた。僕には他の選手の練習は物足りなく映っていた」。だが結果はオーバーワークを招き、本番に合わせることができなかった。

今の落ち着きは4年前の教訓が生きている。そしてロンドンの完敗、0.1点差で涙をのんだ2014年世界選手権、昨年の37年ぶり王座奪還と、この間に内村の執念を知った仲間も変わった。同じオールラウンダーとして価値観を共有できる加藤凌平と田中佑典の成長、ワンダーボーイ白井健三の出現、同い年の山室光史の復活。孤高の存在だった内村が「僕が本当に信頼を置けるメンバー。プロの集団」と言い切るまでになった。

ただ一つ、目指す場所だけは不変だ。この4年間、団体金メダル以外の目標は口にしなかった。「自分たちが準備したことが本番でできれば結果はついてくる。自信はかなりあります」。三度目の正直を果たすときが迫っている。

=敬称略

(山口大介)

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