年齢・国籍超えて 交友とビジネス両輪
ブッシュ米元大統領とも懇意
タイ・CPグループ会長 タニン・チャラワノン氏(28)
私はお世話になった方とは長くお付き合いさせていただいている。それがまた次のビジネスを引き寄せることもある。CP(チャロン・ポカパン)グループが日本に足がかりをつかめたのは台湾の友人らのおかげだ。台湾の経営者仲間の蔡添寿さんが翁炳栄さんを紹介してくれた。

翁さんは歌手ジュディ・オングさんのお父さんだ。私より十数歳も年上だが、気が合った。次兄とも非常に仲がよい。翁さんは日本の知己も多く、日本への冷凍鶏肉の輸出を仲介してくれた。翁さんにはCPの東京代表になってもらった。中国で一緒にテレビ番組「正大綜芸」の制作を始めたのは前に述べた通りだ。
台湾の友人で忘れられないのは徐偉峰さんだ。1960年代に台湾で第一百貨というデパートを経営していた。おいしいものに目がない徐さんとは食べ歩きを楽しんだ。東京の中華レストラン「楼外楼」を紹介してくれたのも彼だ。翁さんと3人で中華料理に舌鼓を打った。徐さんは残念ながら早くに亡くなった。
シンガポールではゴー・チェンリャン(呉清亮)さんと親しい。ゴーさんも私たちと同じ潮州系の華人だ。ゴーさんはウットラムという会社を創業し、日本ペイントと合弁でシンガポールやマレーシアでペンキ事業をしている。中華圏では「立邦」のブランドで知られ、中国でこのブランドを知らない人はいない。
父の代からお付き合いしているのが香港企業「大地農業」を経営する黄烱南(こうけいなん)さんだ。私の父と同業である野菜の種の販売をなりわいとしている。父の採取した種も販売してもらった。
中国からの石炭輸出の商談が縁でオランダの複合会社、SHVのオーナー一族と知り合った。トップだったパウル・ファン・フリシンゲンさんと懇意になり、SHV傘下の会員制卸売店のマクロをタイに導入した。彼は2006年に亡くなったが、家族との交友関係が続いている。
1990年代後半のアジア通貨危機でマクロの株をSHVに一度は売却したものの、13年に買い戻した。その際に買い戻さないかと声をかけてきたのが、パウルさんのお兄さんの娘さんだ。20年以上も家族との付き合いが続き、ビジネスにつながるのはまれだろう。
米国のロックフェラー家との交友関係もずっと続いてきた。米国の養鶏業を紹介してくれたデビッド・ロックフェラーさんとはかつて毎年1回はお目にかかっていた。いまは100歳を超えられ、面会もかなわなくなった。
米国ではジョージ・H・W・ブッシュ(父)元大統領とも懇意にしている。米企業とタイで通信事業を始めたときに、テープカットをしていただいたのが父ブッシュ氏だ。それ以来、1、2年ごとにお会いしている。1年ほど前にも米国でブッシュ夫妻にお目にかかった。90歳を超えて車いすの生活だが、お元気のようだった。
中国では電子商取引(EC)最大手のアリババ集団を創業したジャック・マー(馬雲)さんを師として仰いでいる。私よりずっとお若いが、IT(情報技術)産業の企業経営では傑出した能力を持ち、学ぶべきところは多い。今の時代、交友に年齢は関係がない。
(CPグループ会長)