春秋

2016/7/28 3:30
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「赤ん坊は申し分なく生まれた」。チャーチル英首相は奇跡だと感じた。米国がついに原爆を完成したという知らせだった。途方もないことが起きている。第2次大戦は終わる。そう確信した、と回顧録に書いている。1945年7月中旬、ポツダム会談初日のことだ。

▼米英とソ連は、ドイツの戦後処理と対日戦のために集まった。原爆の誕生で、戦争の行方は見えた。もはやソ連の対日参戦はいらなくなったが、欧州の勢力圏をめぐり、3カ国は激しく応酬する。この間、米英などが日本に無条件降伏を促す宣言を発する。鈴木貫太郎内閣の「黙殺方針」を新聞が掲載したのが28日である。

▼巨頭が集ったのはベルリン近郊、森に囲まれた館だ。何度か訪れたことがある。同行した同僚や先輩記者も「歴史の現場」に感慨深げだった。今は観光名所で世界遺産でもある。庭は整い、中は明るい。超大国の暗闘は歳月のかなたに飛び去ったのか。日本の戦後を決め世界を変えた舞台の重さをなかなか実感はできない。

▼あれから71年――いぜん、大国のエゴがまかり通る。核実験を重ね周囲を脅す国がある。米大統領の広島訪問を機に、先制不使用を探る動きはあるが、軍縮はいっこうに進んでいない。広島、長崎の惨禍を経ても人類は創り出した超兵器を制御できずにいる。この夏も、巨大に成長した赤ん坊の長い影が地球を覆っている。

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