2018年6月21日(木)

日本をLNG燃料船のハブ港に 拠点を整備
編集委員 松尾博文

2016/8/1 6:30
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 液化天然ガス(LNG)を燃料に使う船舶向けの燃料供給拠点を、横浜港に設ける検討が始まった。環境規制の強化を背景にLNG燃料船は増加が見込まれる。寄港地で燃料供給を受けられるかどうかは港湾の競争力を左右する。アジアの有力港が整備へ相次ぎ名乗りをあげるなかで、日本が先行する条件は何か。

LNG燃料船はアジアにも広がる(日本郵船が建造したLNGを燃料に使うタグボート)

LNG燃料船はアジアにも広がる(日本郵船が建造したLNGを燃料に使うタグボート)

 国土交通省は6月、「横浜港LNGバンカリング拠点整備方策検討会」を立ち上げた。国交省や経済産業省のほか、港湾運営にあたる横浜川崎国際港湾(横浜市)や日本郵船東京ガスなどが参加している。

 バンカリングとは船舶への燃料補給のこと。通常は重油を供給する。検討会では2020年ごろまでに横浜港にLNG燃料船向けの供給設備を設置するための技術面の課題などを検討する。年内のとりまとめを目指す。

 検討を始めた理由は、LNG燃料船の増加への対応だ。北欧や北米では船舶からの硫黄酸化物(SOx)の排出規制が導入されている。国際海事機関(IMO)はこれを20年にも一般海域に広げる検討を進めている。

 規制への対応策の1つがLNG燃料船の導入だ。世界で導入済みのLNG船は約70隻。発注済みを含めると18年までに178隻が就航する。将来は世界の船舶の1~2割がLNG船に置き換わるとの調査もある。

 日本郵船は仏エネルギー大手のエンジーや三菱商事と、欧州でLNG船向けの燃料供給事業に進出、専用の供給船を発注した。自動車専用船2隻の建造も決め、昨年には日本で初のLNG燃料船となるタグボートが竣工した。

 日本郵船の篠崎宏次燃料グループ長は「LNG燃料船はいずれアジアにも広がる」と語る。国交省はそのときに備え、「横浜港をLNG供給のハブに育て、コンテナ物流の拠点化とあわせて日本の港湾の復権を目指す」(港湾局)狙いだ。

 ただし、LNG燃料船の普及を視野に入れるのは日本だけではない。中国や韓国も供給設備を整える方針を打ち出している。なかでも、船舶向けの重油供給で世界最大級の実績があるシンガポールは、LNG船の時代にもその地位を守るための手を打ちつつある。

 横浜港はライバルに打ち勝つことができるのか。日本が有利な点は世界最大のLNG輸入国であることだ。発電や都市ガス原料として年間8000万トン以上のLNGを輸入。東京湾岸には東京ガスや東京電力ホールディングスなどの受け入れ基地が5カ所にある。

 東京ガスの玄間隆之エネルギー生産部長は「袖ケ浦LNG基地には内航船のための出荷桟橋がある。既存インフラを横浜港でのLNG供給に活用できる」と語る。

 課題は欧州やシンガポールと比べて、どこまで安く供給できるかだ。高ければ、横浜に寄港しても供給を受けずに次の港へ行ってしまう。

 日本は世界最大のLNG輸入国だが、購入価格が米欧に比べて割高だ。経産省は日本をLNGの取引ハブに育てる「LNG市場戦略」をまとめた。LNGの転売を禁じる条項の見直しなど、取引条件の柔軟化を通して調達コストの抑制を目指している。

 LNG燃料船向けの需要は25年に、世界で年2千万トンを超えるとの試算がある。このうち、横浜港がどれだけ扱うかは、LNG調達改革の行方にかかっている。

[日経産業新聞2016年7月28日付]

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