人の和 「伊藤忠となら組める」 初対面の社長に提携申し出
タイ・CPグループ会長 タニン・チャラワノン氏(26)

2016/7/27 3:30
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天の時、地の利、人の和という言葉がある。CP(チャロン・ポカパン)グループと伊藤忠商事の提携はまさにこの言葉に尽きる。CPは2013年1月、中国の金融グループの平安保険集団の株式約15.6%の取得を決め、やや弱点だった金融分野を補強したところだった。

CITIC、伊藤忠との3社提携セレモニー(前列左から筆者、常会長、岡藤社長)

CITIC、伊藤忠との3社提携セレモニー(前列左から筆者、常会長、岡藤社長)

そのころCPの中国事業の責任者から「会長に会ってほしい人物がいる」と言われた。それが伊藤忠の岡藤正広社長だった。日本の商社が繊維事業に見切りをつけるなかで、逆に繊維グループの利益を5倍に伸ばしたという経歴に興味を持った。ただ伊藤忠とは深い取引もなく、面会はなかなか実現しなかった。

半年後、こちら側の強い働きかけで事態は動いた。先方と昼食会を催すため、10月中旬、自家用ジェットで東京に入った。昼食会で岡藤さんと握手をした瞬間、「この人となら組める」という直感がわいた。初対面の相手に私はいきなり「伊藤忠本体の株を1割程度持たせてほしい」と申し出た。

私からの出資提案に対して岡藤さんは「伊藤忠もそちらに出資し、しっかり手を組んでいくのなら検討する」という返事が返ってきた。私は日本の商社のトップと長年つきあってきたが、岡藤さんのように初対面からビジネスの話ができる人はいなかった。翌14年7月、CPグループが伊藤忠に4.9%出資し、伊藤忠がCPグループの香港企業、CPポカパンに25%出資する提携が実現した。

国境をまたぐ資本提携はさらに続いた。日本市場は飽和状態にあり、消費が拡大する余地は大きくない。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の市場の開拓に向け、中国の大手金融グループの中国中信集団(CITIC)に投資しないかと伊藤忠側に提案した。CITICは経済改革が始まった直後に、鄧小平が設立に動いた改革開放政策を象徴する企業だ。

伊藤忠の岡藤社長は物事を見抜く独特の目を持つとともに、改革に取り組み新事業を生み出す実行力のある人だ。とはいえCITICへの投資は1兆円を超える巨額投資であるだけでなく、中国政府の特別な許可も必要となる。

CITICの常振明会長が中国政府への説得にあたった。CPグループは外資第1号企業として中国に進出した企業だ。伊藤忠は1972年の日中国交回復前から中国と貿易関係があった企業だ。こうした古くからの友好関係を理由に常振明会長が説得の努力を続けてくれた。

15年1月、アジア中を驚かせたタイ、日本、中国の大手3社の資本提携が日の目を見た。CPと伊藤忠は日本円で総額約1兆2千億円を投じてCITIC株を10%ずつ、合わせて20%を取得した。

3社には得意分野がある。伊藤忠は世界的な物流・商流を持ち、人材面で優れている。CPはASEANでは最大級の複合企業グループであり、農業から食卓につながる流通小売業を擁し、豊富な華人人脈がある。CITICは金融と実業を兼ね備えた中国最大級の複合グループであり、そのネットワークは中国全土に張り巡らされている。

3社の経営資源とネットワークを重ね合わせれば強者連合となる。グローバル市場を見据え、さらに大きなビジネスの舞台をつくりあげられる。

(CPグループ会長)

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