2019年5月23日(木)

ポケモンGOで再認識 日本のコンテンツ力
伊佐山 元(WiL共同創業者兼最高経営責任者)

2016/7/29 6:30
保存
共有
印刷
その他

米国では夏休みがすでに後半に差し掛かっている。米国での目下のブームといえばスマートフォン(スマホ)向けゲームの「ポケモンGO」。街中に巧みに配置されたデジタルのポケットモンスター(ポケモン)を獲得するために、老若男女がスマホを片手に近所を歩き回る。特に多くのポケモンが出現するエリアには、多くの人だかりが朝に夕にできている。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

私はテクノロジーがどのようにして社会を変えるのかについて関心を持っている。強力な知的財産であるポケモンと全地球測位システム(GPS)を駆使したゲームという技術の組み合わせが一晩にして米国の市民の行動形態を変えてしまう威力には、驚くと同時に大きな可能性を感じている。

ポケモンGOでは地理的なロケーションにデジタルな資産(ポケモン)を配置した。その結果、クルマ社会で歩くことの少なかった米国人がよく歩くようになった。オンラインゲームによって引きこもりになった児童がポケモンを探すために外に出るようになったというニュースも聞く。

過疎が進んだ地域からすれば、珍しいポケモンを配置することで、国内外から観光客を誘致して、人の移動を変える可能性もある。さらに付け加えれば、長さの単位として主にマイルを使っている米国人がメートル表示を学ぶようにもなった。

ポケモンGOによる事故やトラブルもこれから増えるであろう。だが、この世界を使った壮大なゲームは、デジタルという仮想現実の世界と現実の社会を結びつけることで、新鮮な体験と実社会へのインパクトが生まれる可能性を証明した。

テクノロジーは使いようによっては、日本の社会が抱える課題の解決のヒントになりうる。例えば、健康的に長生きすることは、国家の医療コストを考える上で不可欠だ。ポケモンGOについて述べたように、テクノロジーが世代を超えた全国的な散歩ブームを喚起し、健康向上に寄与することが期待できる。

過疎に悩む地域でもイベントを催すことで都市部から人を誘致できるかもしれない。海外の人に日本を広く知ってもらい、地方の活性化につなげられる可能性が出てくる。それこそ、選挙の投票所にレアなポケモンを配置すれば、若者の投票率は激増するであろう。

グローバルに見れば、これほど日本を世界にPRできる好機はない。私も最近、シリコンバレーの高校生に「日本ってクールだよね」と褒められ、悪い気はしなかった。まだ短期的な流行とはいえ、日本のコンテンツと米グーグルが生み出した技術の融合で生まれたこのサービスが、世界を席巻していると思うと、痛快でもある。

今後、すべてのモノがネットとつながる「IoT」やコネクテッドカー、コネクテッドロボットなど、有形物とネットの融合が進む。それにつれて、テクノロジーが一般社会や個人の生活や行動形態に与える影響はますます進むといえる。

その中で日本のコンテンツやデザイン力、文化がグローバルに貢献できるものは、意外に多いかもしれない。そう考えると、ポケモンGOがブームになった今年の夏は、温故知新の発想で日本の文化や歴史の良さを改めて理解し、グローバルに誇るべきものを再評価するには良い機会かもしれない。

[日経産業新聞2016年7月26日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報