働く人が安心できる「ギグエコノミー」に

2016/7/24 3:30
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インターネットを使った配車サービスの運転者になったり、ネット経由で企業から商品デザインなどを受注したりというように、世界では個人の働き方が多様化している。こうした一回一回仕事を請け負う就業形態の広がりは「ギグエコノミー」とも呼ばれる。

就労機会を増やす動きとして歓迎したい。IT(情報技術)が経済を活性化する例のひとつといえる。半面、働く人の生活が不安定になる恐れも否定できない。IT時代の個人の新しい働き方を浸透させるため、待遇改善など労働者保護の取り組みが重要になる。

スマートフォンを活用した配車サービスで急成長する米ウーバーテクノロジーズは、運転者を従業員ではなく個人事業主として扱う。米国では月に4回以上働く運転者が40万人にのぼる。

主にウーバーの収入で生計を立てる運転者が増え、「会社は労働者の権利を守り、待遇改善を進めよ」と訴える声が強まっている。自分の都合で好きなときに働く自由はあるが、雇用されている従業員のような安定した待遇を望めないことが背景だ。

このためウーバーは今春、ニューヨークで働く運転者が参加できる労働者組織の設立を承認した。正式な労働組合ではないが、処遇上の問題などを会社と定期的に話し合い、運転者の生命保険加入などを支援する。

サービスの健全な普及を促すため、労働環境の整備にウーバーが知恵を絞る余地は大きい。日本でもサービスが本格的に普及した場合、運転者が安心して働ける環境づくりが課題になるだろう。

データ入力、デザインや家事などをネットで個人に仲介する「クラウドソーシング」は、日本でも急速に広がっている。受注する人は発注者と雇用関係にないため、最低賃金が適用されない。仲介サイトの運営会社は最低保証額を設けることを検討すべきだ。

サイト運営大手のクラウドワークスは、病気やけがで収入が途絶えたとき給付が受けられる就業不能保険に働く人が加入しやすいよう、会社が費用を負担する仕組みを考えている。いざというときへの目配りも大事になる。

著しく低い代金での仕事の発注などを禁じた下請法は、個人も保護対象の下請け業者に含まれる。ギグエコノミー時代は法令違反の取り締まりも重要だ。公正取引委員会の役割は一段と重くなる。

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