事業3本柱 通信参入、思わぬ強みに 食品や流通業と相乗効果
タイ・CPグループ会長 タニン・チャラワノン氏(24)

2016/7/25 3:30
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タイ国内でのCP(チャロン・ポカパン)グループの3本柱は農業・食品、小売り、通信だ。このうち通信事業は私が好んで始めたものではない。CPの多角化は主力の飼料や養鶏、養豚などのアグリビジネスから派生していったものだが、通信事業は農業とは何の関係もないからだ。

1980年代までタイの電話はタイ電話公社が独占していた。しかし独占の弊害から事業の運営効率が悪く、一般家庭に電話が普及していなかった。電話の加入を申し込んでも、敷設まで何年も待たされるような状況だった。

88年に選挙を経て就任したチャチャイ首相は通信事業の改革に着手した。政府は通信事業を外資や民間に開放し、電話の普及を促そうと考えた。英国、ドイツ、フランスなどの通信大手が参入する意向を示していた。権利の入札には多額の保証金を預け入れねばならなかった。

CPにも期待がかかった。王室系のサイアム・セメント・グループとCPグループしか入札に参加できそうなタイ企業はなかった。結局、サイアム・セメントは入札に参加せず、我々CPが固定電話サービス事業を落札した。

電話事業にはずいぶんとお金を投じた。外国のパートナーが変わるなど紆余曲折(うよきょくせつ)があったが、90年代を通じてバンコクの固定電話の普及に貢献したといえるだろう。何年も待たなければならなかった電話の敷設を、予約から1週間でできるようにした。この電話会社が発展し、CPの中核企業のひとつであるトゥルー・コーポレーションとなった。

悔やまれるのは入札で移動体通信事業を見逃してしまったことだ。あのときに権利を落札していれば、移動体通信事業はもっと早くに大きく強くなっていたはずだ。CPは2000年代に入って移動体通信事業を本格化した。価格優遇や高品質の新サービスを絶え間なく投入し、先行する2社を追いかけてきた。

そのかいあってトゥルー・コーポレーションはタイで唯一の総合的な通信事業会社になった。モバイルネット、インターネット、テレビ放送の三位一体の通信網を構築している。最近は携帯電話サービスで高速大容量の4G(第4世代通信)の免許を落札した。これで顧客の数を増やし、サービスを向上できる。

当初は本業の食品や流通業と関係がないと考えていた通信事業だが、今では大きな相乗効果を生んでいる。我々がタイで展開しているコンビニエンスストアのセブンイレブンでは、トゥルーのプリペイドSIMカードを購入できる。携帯電話そのものもコンビニで売っている。通信事業に参入したことにより、電子商取引やケーブルテレビ事業にも参入できた。

80年代後半から90年代前半にかけてタイは10%前後の経済成長を繰り返し、東アジアの奇跡とまで呼ばれた。我々CPも高成長に寄与したし、逆に成長の波に乗って事業を拡大してきた。

こうした順調すぎるほどの事業拡大のなかで、タイの企業は成長資金として外国の銀行から借り入れを大幅に増やしていた。CPも例外ではなかった。そこを97年のアジア通貨危機で突かれてしまう。

(CPグループ会長)

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