ネットで「マイシャンプー」 回答5分で私好みに調合
(三浦茜)
新たな購買促進の手法として米国ではパーソナライゼーションが進んでいる。EC(電子商取引)サイトで個人の購買履歴や閲覧履歴に合わせてレコメンデーション(お薦め)が表示されるのは既に当たり前だが、そこからさらに進んだパーソナライズ、つまり個別対応について、筆者が実際に利用してみたサービスをご紹介したい。

まずはパーソナルスタイリストサービス。スタイリストというと芸能界や雑誌の中の存在だったが、現在は個人で利用できるサービスが幾つもある。
筆者が利用しているのは「スティッチフィックス」という女性向けサービス。人工知能(AI)と人間のハイブリッド型で、同社には2800人のスタイリスト、AI開発のために60名のデータサイエンティストが在籍しているという。
最初に10分ほどかけて服のサイズ、色や形の好み、苦手なスタイル、予算などを細かく入力する。自分が画像共有サービスの「ピンタレスト」で集めた服などの写真も登録できる。交流サイト(SNS)も活用し、言語化しにくいファッションの好みを判別しているという。
約2週間後、自分のためだけにスタイリストが選んだ服やアクセサリーが5つ、自宅に届く。スタイリング料は20ドル。届いたアイテムを購入する場合は、その20ドル分は値引きされる。購入しない場合は、同封の返送用のパッケージに入れてポストに投函(とうかん)すればいい。
届いた商品は非常に絶妙なセレクションだと感じた。少ない情報の中で筆者にフィットする服を選んでくれている。実際に2つを購入した。
スティッチフィックス以外にも、男女両方に対応している「トランククラブ」、男性に特化した「ボムヘル」、また靴を選んでくれる「シューダズル」といったサービスもある。インテリアコーディネーターが部屋づくりを指南する「ヘブンリー」など領域はファッション以外にも広がる。
製品そのものが個別対応なサービスもある。いわゆるオーダーメード。一般にイメージするのはスーツなど服だと思うが、筆者は自分専用のシャンプーとコンディショナーを調合できる「ファンクション・オブ・ビューティー」を試してみた。
まず自分の髪のプロファイルを作成する。現在の髪の状態と、なりたい髪を入力。その後にシャンプーの色や香り、サイズを選んでお届け先を入力すれば注文完了。ほんの5分ほどで終わるが、調合の可能性は膨大だという。

価格はシャンプーとコンディショナーで26ドル。安くはないが自分用にカスタムされていると思えば高くはない。使い心地もまずまずである。
シャンプーだけでなく、自分専用のサプリメントセットを注文できる「ゼナミンズ」、棒状の栄養食品のエナジーバーを作れる「ユーバー」といったサービスもある。
オーダーメードというと高価なイメージがあったが、データ分析や製造工程のロボット化が安価になることで、市場価格と比べても遜色ない価格で一般にも提供できる環境が整いはじめている。食品や化粧品などの領域にさらに広がりそうだ。
パーソナルスタイリスト、オーダーメード以外にも、気軽に利用できるコンシュルジュサービスや人工知能によるアシスタントサービスも最近よく耳にする。個別対応の流れはこれからさらに進むだろう。
(スクラムベンチャーズ マーケティングVP)
〔日経MJ2016年7月1日付〕