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なお謎が残る「炉心溶融」

2011年3月の福島第1原子力発電所事故のとき、東京電力は社長の指示で、「炉心溶融」という言葉を使うのを意図的に避けていたことがわかった。

炉心溶融の公表が遅れた背景を調べていた東電の第三者検証委員会が、当時の清水正孝社長が「首相官邸からの指示」として広報担当者に伝えていたと結論づけた。

避難する地元住民や救援に向かった自衛隊などはもとより、国民全体に対し、東電は正確な情報をできるだけ早く伝える責任があった。炉心溶融への言及を避けたのは極めて不誠実な判断だった。

今なお国民の間に根強く原子力への不信感が残るのは、こうした東電の姿勢にある。当時の経営幹部の責任は重い。

検証委は清水社長が官邸の誰からどんな指示を受けたのかを明らかにしていない。清水社長は「記憶がはっきりしない」と供述したという。検証委は当時官邸にいた政治家や官僚への聞き取りはしておらず、裏付けをとっていない。謎は残ったままだ。

東電が「炉心溶融」を公式に公表したのは2カ月後の5月になってからだ。溶融を判断する明確な基準がなかったため遅れたと、東電は説明した。ところが今年2月になって炉心溶融の判断基準を記した社内マニュアルの存在を明らかにし、マニュアルを見過ごしていたと説明を改めた。

では、なぜ5年もの間、マニュアルの存在を公表できなかったのか。その理由も未解明だ。この点でも検証委の調査は甘いといわざるを得ない。さらなる調査が必要ではないか。

一連の経緯から垣間見えるのは、多数の原発を動かす東電の幹部が炉心溶融に至るような重大事故への心構えを欠き、周辺住民の安全を最優先で考えることもしなかったという事実だ。

危機において事態を正確に掌握できず、情報を社会に伝える判断もできなかった。電力会社は東電の混乱を他山の石として平時から備えをすべきだ。

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