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日本に根付くクラウドファンディング 大手も活用

(藤元健太郎)

クラウドファンディングの利用が増えている。インターネットを通じて、事業に小口出資を募る仕組みだ。米国の大手のキックスターターでは10万件以上のプロジェクトが実施され、これまで24億ドル以上が投資されている。米国で資金を集めているプロジェクトを見てみると、どれもプレゼンテーションのレベルがとても高い。

東芝のアルコール検知器は1200万円を集めた

多くが試作品を動画で紹介しているのだが「こんなものができるならすぐにでも欲しい」と思えるような商品がたくさん並んでいる。しかし、実際のところは成立しないプロジェクトも多い。先ほどの10万件の成功に対して、失敗したプロジェクトも19万件と倍近く存在するのだ。

最初のプレゼンはうまいけど実際にものが作れない米国に対して、日本のクラウドファンディングでは逆のことが起きているようだ。

成功率が高く、プレゼンは地味だが完成して送られてきた商品が期待以上に素晴らしかったという評価の商品も多いらしい。国民性の違いもあると思うが、ものづくりの力がまだまだあることの証とも言えるだろう。

クラウドファンディングでは様々なものが支援案件になるが、イメージとしてはベンチャーが使うという印象を受ける人が多いだろう。しかし日本で注目すべきは大手も含む「新しいものづくり」としての動きだ。

例えば最近人気を集めたプロジェクトとして、東芝のアルコール検知ガジェット「TISPY」がある。当初目標の150万円の8倍の1200万円以上が集まり大成功となった。

この製品はスマホと連動してアルコールを検出し、自分に合ったアルコール管理ができるため、お酒に弱い人が多い日本人には「欲しかった!」という声が出ている。

このプロジェクトは東芝が企画するが、実際の製造責任者としてスタッフ(大阪府門真市)という中堅のメーカーとコラボレーションしている。スタッフは普段から大手家電メーカーの下請けとしてこうしたプロトタイプ開発製造で十分実績のある企業だが、表に名前が出ることは少ない。

日本の家電などの大手製造業になると、新製品開発も大変である。予算の獲得、何段階もの社内決裁。リスクをとりたくない人が決裁者の中に1人でもいると、そこで止まることも多い。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

さらに商品を販売する際にも広告宣伝や販売チャネルの選定など、社内の各セクションと調整するだけでも大仕事になる。日本の家電などの大手製造業がいまいち元気がない理由として、挑戦的な商品を開発する時に大企業病とも言える状況がハードルになることが多いのではないだろうか。

そうした中でクラウドファンディングの活用は大きな可能性を秘めている。先行販売の形で市場の反応を見極めてから体制を強化できる。

さらにこれまで表にでてこなかった中小のメーカーとのコラボで大企業はリスクを分散でき、中小メーカーとしては自分達の力を世の中にアピールするチャンスになる。

ソニーも社内に眠っていた暗号技術を活用したスマートロックの「Qrio」をはじめ、電子ペーパーを活用した「FES Watch」などクラウドファンディングを活用した新しい製品を出し始めている。

先ほどのTISPYが成功したMakuakeを運営するサイバーエージェント・クラウドファンディング(東京・渋谷)の中山亮太郎社長は「日本のものづくりのレベルはやはりとても高い。特に中小で有名でないものの卓越した技術力を持つところが多い。どんどんそうした企業を有名にしたい」と語る。

クラウドファンディングが日本の中小製造業メーカーの底力を底上げし、大企業のオープンイノベーションを加速する強力な武器になることを期待したい。

〔日経MJ2016年6月17日付〕

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