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三菱UFJ銀の「国債離れ」が鳴らす警鐘

三菱東京UFJ銀行が日本国債の入札で「特別参加者(プライマリー・ディーラー)」と呼ぶ資格の返上を検討している。日銀のマイナス金利政策の導入で、国債を持った時に損失が生じる懸念が強まったためだ。メガバンクの「国債離れ」は、日銀や政府の政策運営にも警鐘を鳴らしている。

特別参加者は国債の安定消化に向けて財務省が2004年に導入した。証券会社や銀行ら22の機関投資家が資格を持つ。それぞれ発行予定額の4%以上を応札する義務がある。市場の情報などを財務省と意見交換できる特典もある。

三菱東京UFJ銀が返上を考える要因の一つは金利変動リスクだ。今は国債利回りが極めて低いが、財政不安などで長期金利が上昇(国債価格が下落)すると保有する国債に含み損が出る。国際金融規制の議論でも国債のリスクへの関心は高く、自己資本の上積みが検討課題となる可能性もある。

第二にマイナス金利政策だ。金利低下で10年物国債でもマイナス金利の落札が頻発し、満期まで持つと損が出る。銀行は日銀にすぐ国債を転売する「日銀トレード」でしのいでいる。

メガバンクは国債保有を抑えてきたが、三菱UFJのグループは16年3月期の残高が28兆円と他行より多い。損失リスクを抱えた国債を今後も義務的に買うのは株主に説明がつかない。企業統治の観点では返上は合理的な判断だ。

三菱東京UFJ銀は一般の機関投資家として入札に参加し、グループの系列証券会社は特別参加者の資格を持ち続ける見通しだ。国債の消化がただちに滞るとは考えにくいが、今回の事態は政府、日銀と銀行の3者が築いた信頼関係の綻びを如実に示している。

8日の金融市場では日銀が追加緩和でマイナス金利の幅を広げにくくなったとの見方が台頭した。さらに損失拡大の懸念が強まれば、他のメガバンクや機関投資家にも資格返上が広がりかねないとの連想からだ。デフレ脱却後に異次元金融緩和を元に戻す「出口」でも、銀行が国債保有を渋り、日銀の政策転換が滞る懸念もある。

財政運営への影響も大きい。歳出を膨らませ増税を先送りしても、巨額の国債を国内の投資家や日銀が買ってくれたので、日本国債の信用は保たれた。やがてこの構図は通用しなくなる。今回の動きは、アベノミクスに伴う様々なひずみの表れととらえるべきだ。

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