2019年7月18日(木)

G7環境相会合、海洋ごみと食品の廃棄減で声明
日本総合研究所理事 足達英一郎

2016/6/13 6:30
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5月15~16日、富山市で主要7カ国(G7)環境相会合が開催された。会合は非公開だったが、採択された声明は、いま世界が直面している環境問題の現実について、幅広い視点で議論されたことを物語る。同時に、今後の世界の環境政策の潮流を占う多くの材料を提供している。

声明で、まず最初に注目したいのは、気候変動及び関連施策の章で、「市場アプローチを含む緩和策」が大きく取り上げられたことだ。金融システムのグリーン化に言及がなされるとともに、カーボンプライシング(炭素への価格付け)を効果的な手段として、更に促進すべきであるとした。日本国内では依然として抵抗感が強いが、排出量取引制度や炭素税への理解は、世界レベルでは着々と進んでいる。航空会社間で排出枠を売買する国際民間航空機関(ICAO)の新たな削減ルールへの合意を強く促す一文も盛られた。

第2は、同じ章で「短期寿命気候変動汚染物質の排出量の緩和の重要性を認識する」と明記された点だ。地球温暖化の原因物質としては二酸化炭素に注目が集まるが、例えばオゾン層破壊を緩和する目的で使われている代替フロンは、地球温暖化への影響が二酸化炭素の千倍以上であることが知られている。今後、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などは規制対象となることが確実視され、エアコンの冷媒などをどうするか日本企業への影響も大きい。

第3は、海洋ごみの章が独立して設けられたことだ。「特にプラスチックごみ及びマイクロプラスチックが海洋生態系にとって脅威である」と明記された。プラスチックごみは海の生物に物理的損傷を与えるだけではない。より懸念されるのは、マイクロプラスチックに吸着した有害化学物質が海の生物の体内に蓄積される状況である。今後、対策が強化されるのは必至であり、これもパーソナル・ケア、タイヤ、塗料、衣料品などの日本企業に大きな影響をもたらすだろう。

第4は、G7による協調行動として「持続可能な消費と生産」という視点から、食品廃棄を減らすことによる気候変動等の環境分野での便益を測定する比較可能な手法の開発、製品の環境負荷に関する情報、第2の価格タグ、賞味期限の変更、外部費用の内部化の推進に言及がなされたことだ。食品メーカーや小売業を中心に、環境政策の視点でより実効的な製品表示を求める機運は今後、なお一層高まっていくと予想される。

ところで今回の、声明では、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という章が冒頭に置かれた。昨年9月に国連サミットで採択されたこの計画は、日本国内では必ずしも知名度が高いとはいえないが、G7伊勢志摩サミットでも各国の強い関心が示された。ここに紹介した4つの注目点も、この計画を構成する「持続可能な開発目標」(SDGs)の17の目標、169のターゲットと密接に結びついている。今後、10年先までの世界の環境政策は、この「持続可能な開発目標」の達成を目指して進展していくと考えてもよい。

5月20日には、首相官邸に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置された。年末に向けて日本の「SDGs実施指針」を策定していくという。産業界の思惑とそれを代弁する各省庁間の対立で、わが国の環境政策は往々にして機動性を欠くことが多いが、推進本部が縦割りを克服して、内容のある実施指針を作れるか。今後は、推進本部の真価が問われることになる。

[日経産業新聞2016年6月9日付]

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深刻化する海の「微細プラごみ」問題

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