2019年1月24日(木)

どう増やす日本の学生起業家 失敗許す風潮必要
野口 功一(PwCコンサルティング パートナー)

2016/6/10 6:30
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先日、アジアのスタートアップ(ベンチャー企業)の支援を目的としたイベントが日本でも開催された。世界中からスタートアップが集まり、自社の製品やサービスを投資家や大企業にアピールしたり、ブースを出展して多くの来場者に製品やサービスを体験してもらったりしていた。様々な分野のスピーカー(講師)によるプレゼンテーションやパネルディスカッションも行われた。まるでミュージシャンのライブのような活気あふれる場であった。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

のぐち・こういち 主にイノベーションを起こすための社内組織・風土の改革のコンサルティングを行っている。スタートアップ企業や地方創生の支援にも取り組んでいる。海外の事例にも詳しい。

当社も会場の一角を借りてブースを出し、そのエネルギーあふれる雰囲気の中でたくさんの来場者や出展社と交流を持たせていただいた。全体を通して最も印象に残っているのは、多くの学生が運営に携わっていたことだ。

日本では「ベンチャー企業の活性化」や「起業家の育成」が求められるようになってから長い年月がたっている。日本で成功している起業家には、大企業や金融機関、コンサルティング会社から独立した人や経営学修士号(MBA)ホルダーなどが多い。学生起業家、もしくは大学を卒業してすぐに起業して成功したケースはまだ少ないと感じる。

シリコンバレーで起業家支援をしている友人に聞くと、優秀な学生ほど在学中もしくは卒業後すぐに起業をするという。こういう話をすると起業ができる環境がシリコンバレーと日本では違うという声が聞こえてきそうではあるが、それだけではない気もする。

日本の場合、バブル経済の崩壊までは、いい学校を出て有名な企業に入ることによって生涯安定した人生が送れるというのが人生の成功モデルであった。その頃に起業家として成功している人の多くは、そうした環境に恵まれなかったために、逆境を跳ね返そうと努力してきたように感じる。

そのような傾向は緩やかに変わり、終身雇用や年功序列といったかつての成功モデルの前提条件も崩れつつある。だが、そのペースはあくまでも緩やかである。起業家の輩出という点で見ても「まずは安定した職業や経験を積んでから起業する」というケースが目立つ。

この背景には「失敗を許さない」という雰囲気があるのではないか。シリコンバレーであれば、むしろ若いのだからどんどん失敗を経験していくことが奨励されている。そうであれば、在学中や卒業後すぐに起業するのが一番である。日本にもそうした雰囲気があれば、学生も在学中からどんどん起業をするということをイメージし、創造性を発揮していくであろう。

就職のためのテクニックの勉強も重要だが、就職以外の選択肢をもっと学生にも普通に考えさせることが必要なのではないだろうか。それには大学に入るまでに創造性や意思決定などを学び、経験することが必要だと感じる。

今回のイベントで学生が生き生きと活躍するのを見て、日本もそんな動きが進みつつあると感じる。また、たくさんの大企業がこのイベントに協賛して学生の活動を後押ししていることに感銘を受けた。

シリコンバレーで成功した学生起業家は多い。歴史を変えるような新しいイノベーションは若い人材から生まれることが多いのである。学生は吸収力もあり、頭もやわらかいはず。そんな時にビジネスを考える機会を与えるべきである。日本でも学生起業家がどんどん登場し、私が今回のイベント出会った学生たちの中から将来の有名起業家が生まれることを祈っている。

[日経産業新聞2016年6月7日付]

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