2019年2月21日(木)

「本震→余震」の常識覆る 連鎖地震 浮かぶ課題(2)
誘発の仕組み 未解明多く

2016/5/30付
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「これまでの『本震―余震』型の予測手法では不十分」。熊本地震から約1カ月後の5月13日、政府の地震調査委員会で、平田直委員長は余震を評価する手法を見直すことを明らかにした。

13日の地震調査委員会で余震評価方法の見直しについて語った平田委員長

13日の地震調査委員会で余震評価方法の見直しについて語った平田委員長

1926~95年に起きたマグニチュード(M)5.5以上の内陸直下型地震153例を分析した結果から、調査委は98年に評価手法を作成。M6.4以上なら「本震」とみなすことにした。これに沿う形で気象庁は熊本地震で4月14日のM6.5の地震を本震と判断した。

その後、16日にM7.3の地震が発生。気象庁は14日の地震を前震、16日を本震と改めた。国内では前例に乏しい現象だが、「想定外」で片付けてよいのか。

そう考える研究者の一人が京都大学の梅田康弘名誉教授だ。15日未明に発生したM6.4の余震に注目する。余震は最初の地震よりマグニチュードが1ほど小さくなることが多いが、15日未明の余震は14日の前震とほぼ同じ規模だった。「この時点で連鎖の可能性を疑うべきだった」と話す。

地震が別の地震を誘発する要因は大きく2つある。一つは大地震の発生で周辺の地下にかかる力が変化することだ。震源から特定の方向の領域でひずみが増え、そこにある断層で地震が起きやすくなる場合がある。もう一つは地下を伝わった地震波による活断層への刺激。ひずみがたまっていると揺さぶられた断層は動きやすくなる。

熊本地震の本震発生後、北東の阿蘇地方や大分県側にも震源域が広がった。地下の力の変化や揺れによる刺激が連鎖の引き金になったと考えられる。梅田名誉教授はさらに火山帯との関連を指摘する。火山に近い地域は地震が連鎖しやすいことがわかっている。震源域となった熊本や大分は阿蘇山や九重山といった活火山があり、日本有数の温泉地も多い。

熊本や大分には、別府―島原地溝帯と呼ぶ地質構造が広がる。この地域では地盤を南北に引っ張る力が働く。地下深くでは、高温・高圧の液体が上昇しようとしている。これが地震に伴う揺れやひずみの影響で、地下の岩盤に入り込んで断層を滑りやすくした可能性がある。

「九州では、過去にも地震が立て続けに起きてきた」。熊本地震後に開かれた地震予知連絡会や関連学会では、複数の専門家からこうした声が上がった。1975年には阿蘇地方や大分県西部で、97年には鹿児島県の薩摩地方でM6級の地震が連発した。御嶽山などがある長野県西部や伊豆地方といった火山に近い地域でも、連続的な地震が観測されてきた。

「中部地方の糸魚川―静岡構造線断層帯や紀伊半島から四国を横切る中央構造線断層帯も活断層が集まる。いったん大きな地震が起きると、連動する恐れがある」。千葉大学の金田平太郎准教授はこう警鐘を鳴らす。2千を超す活断層がひしめく日本では、地震の連鎖は今後も起こりうる。

95年の阪神大震災後、危険度の高い活断層の調査は進んだ。しかし、地震発生の履歴を正確につかむのは難しく、金田准教授は「情報は全然足りていない」と指摘する。地震を誘発させる連鎖の仕組みは未解明な部分がさらに多く、研究を重ねて知見を充実させる必要がある。

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