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日米和解をアジア安定に生かそう

日本に原爆が落とされてから70年以上の歳月が流れた。この長さに比べれば、時間的にはほんの一瞬のできごとだった。しかし、日米にとってはもちろん、世界にとっても極めて大きな意義をもつ訪問である。

オバマ氏が現職の米大統領として初めて広島を訪れた。長崎も含めた第2次世界大戦のすべての犠牲者を追悼するとともに、核廃絶への決意を訴えた。被爆者とことばを交わす機会もあった。

広島訪問の歴史的意味

米国内の世論に配慮し、オバマ氏は原爆投下への謝罪は避けた。それでも、この訪問には2つの歴史的な意味がある。

ひとつは、かつて敵国として戦った負の歴史を乗り越え、日米が和解をさらに深める足がかりになることだ。

日本人のなかには、すでに日米の和解は終わっていると感じる人が少なくないかもしれない。日米は緊密な同盟国であり、各種の世論調査でも、両国民は互いに親しみを抱いているからだ。

確かに、日米は長年の協力や交流を通じ、旧敵国とは思えないほど太いきずなで結ばれている。2011年の東日本大震災で、米軍が「トモダチ作戦」と称して日本のために空前の支援を展開したことは記憶に新しい。

しかし、そんな日米も、先の大戦の「傷口」が完全に癒やされたとはいえない。原爆投下をめぐる問題は、そのひとつである。

日本にはなお、被爆の後遺症やトラウマに苦しむ人たちがいる。一方、米国内ではいまだに「原爆投下によって戦争を早く終わらせることができ、多くの人命を救った」という肯定論がある。

大統領による1回の訪問でこれらの溝が埋まり、被爆者が苦しみから解放されるわけではない。それでも、日米に刺さったままになっていたトゲがまたひとつ、抜けたとはいえるだろう。

広島や長崎の被爆とは別の意味で、沖縄に米軍基地が集中している現状も、第2次世界大戦から米国による日本占領、そして米ソ冷戦へと続いた負の歴史と無縁ではない。最近も米軍関係者による残虐な犯罪が再び沖縄で発覚し、県民の強い怒りを招いている。

沖縄の米軍は、日本やアジアの安全を保つうえで欠くことのできない役割を果たしている。だからこそ、日米両政府は米兵や米軍関係者の犯罪をなくすとともに、地元の基地負担を減らす努力を急がなければならない。

25日の日米首脳会談で、オバマ氏は犯罪の再発防止策の徹底を約束した。決して空手形に終わらせてはならない。

和解に取り組む日米の姿は、アジアの他の国々もじっと見守っている。「原爆を落とされたのに、なぜ日本人は米国と仲良くなり同盟まで組めるのか」。中国の政府当局者から、こんな質問を受けたことがある。

大戦で正面からぶつかった日米が和解を進め友情をさらに深められるなら、同じことは日本とアジア諸国にもできるはずだ。オバマ氏の広島訪問は、そんなメッセージも放っている。

日中、日韓はいまだに歴史問題で対立し、ぎくしゃくした関係から抜け出せないでいる。過去を克服し、未来志向の関係を築くきっかけにしたい。

核なき世界今こそ前へ

広島訪問のもうひとつの意味は、オバマ氏が09年に唱えた「核兵器なき世界」の目標に、世界の注目があらためて集まる契機になることだ。

残念ながら世界はいま、理想とは逆の方向に進んでいる。北朝鮮は制裁を受けても核武装をあきらめようとしない。中国も核軍拡を進めている。米ロの対立から、両大国による核軍縮交渉も足踏みしたままだ。

オバマ氏が広島を訪れたからといって、この流れがすぐに変わるとは思えない。だが、最大の核保有国のひとつである米国の指導者が核廃絶の旗印をもう一度高くかかげた意義は、大きい。

日本は唯一の被爆国として核廃絶を訴える一方で、米国の核戦力によって守られているという矛盾した顔をもつ。核保有国に囲まれた現状では、ただちに米国の「核の傘」をなくすことはできないにせよ、核軍縮の流れを主導する責任が日本にはある。

米大統領選では、日米同盟の現状に疑問を投げかけ、日韓の核武装を認めることすらも示唆するトランプ氏が、共和党候補の座を固めた。孤立主義の誘惑に負けず、ともに世界に関与していく。日米はこの決意を新たにしたい。

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